古川令

ミリオン〇〇〇

 ミリオンカードというのは英語ではなく、国内でしか通じない和製英語ですが、ミリオンカード、ミリオンシガレットなど、ミリオン・・には文字通り沢山の出現による不思議さや楽しさを感じさせ、テクニックをイメージさせるマニピュレーションという言葉よりは私は親しみを感じます。

 スライハンド・マジックの現象では、出現、消失、移動、変化などがありますが、私が一番好きなのは量的な出現(ミリオン○○○)です。石田天海さんのステージでも、ミリオンカード、ミリオンシガレット、ミリオンウォッチなどが浮かびます。蛇足ですが、1990年代のパソコン通信の時代にマジックのフォーラムがあり、そこでのハンドルネーム(ニックネーム)はミリオンと名乗っていました。
 私がスライハンドの現象の中で「出現」にこだわる理由は、出現が最も不思議であるだけでなく、苦労してマスターした技術がネタやメカでは置き換わりにくいと考えるからです。例えば最近の「変化」の現象では、シルクがボールになるネタは衝撃的でした。強力な磁石やデバイスなどの出現で、信じられないような新たな現象が可能になりましたが、そのような最新のメカや仕掛けを使ったマジックを否定する意図はまったくありません。ただ最終的にネタに負けてしまう可能性がある技法やマジックは、できるだけ避けた方が良いという考えです。

 極論すれば、実際に色が変わる素材が開発されれば、スイッチするカラーチェンジの技法の価値がほとんど無くなります。さらに言えば、そのような素材が一般化すれば、カラーチェンジという現象そのものの不思議さも低下すると思います。
 一方、出現の場合はどうでしょうか?
私はテクニックを凌駕するほどの画期的なネタが開発される可能性は少ないと思います。
10回のファンプロダクションが普通に演じられるほど、カードがさらに薄くなるかも知れません。しかし、そのカードを使えば、私は20回以上のプロダクションができるはずなので、超極薄カードは脅威にはなりません。

 私が出現の現象にこだわるもう一つの理由は、ミリオンカードの基本技法であるファンプロダクションや一枚出しですら、まだまだ改良の余地があるという面白さです。
最近流行のインポッシブルプロダクションにあまり興味が無いのは、汎用性や連続性に欠ける事にあり、流行を追う事のリスクもあります。
ブラックアートや仕掛けを使ったマニピュレーションが流行ですが、古き良きミリオンカードの良さを再発見して頂けるような演技を目指しています。
基本技法については、追求すればするほど奥の深さを痛感させられており、テクニックについては別の機会に最近考えている事を紹介させて頂こうと思います。


シリアル番号付きの1ミリオンダラー札。
何種類もの特殊印刷が施されており、
印刷したAmerican Bank Note社の証明書付です。

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