古川令

フロントパームを突き詰める・・・

 フロントパームをどう変えたかという、今回もマニアックな話です。 当初は一般の方向けに書き始めたコラムですが、プロの方も含め意外にマニアの方に読んで頂いているようですので、前回に続いて私の技法へのこだわりについて書いてみました。

ラビリンスの8回目にフロントパームについての考え方を書きました。
・多数のカードを安定に保持できる
・観客からの視線の角度に強い
・汎用性がある(同じポジションから、1枚だし、ファンプロダクション、インターロッキング・プロダクションへの移行などが可能)
・自然な手の形で、出現させたカードも自然な形である事

 などから、手の小さい私には写真のようなポジションしかないと結論し、学生時代から40年以上もパームの位置は変えていませんでした。
 特にパーム漏れの指摘を受ける事もなく、長年完成形と考えていました。 しかし、最近になって、「手が空という雰囲気を醸し出す」事を考え、出現させたカードをロールしたり、スピンさせたりする場合に手前側のパーム漏れのリスクが高くなるという問題がありました。 さらに最近のビデオ撮影は客席の一番後ろ(上からの目線)である事をなどから、対策を考えた結果、カードを指先側に数ミリ強動かした位置でパームする形に変更しました。 ボトムカードの端は人差し指の第一関節に近い位置になります。

 この状態から実際にカードの出現などを行うとパームの位置が従来の位置に動くのですが、それをカードを捨てる動作でパームの位置を動かします。通常のパームの概念は、カードを保持(ホールド)するイメージと思いますが、私の方法では、カードは小指の付け根の上に乗っていて親指は落ちない程度に触れるだけというイメージです。動いたカードを戻しながらパームするという方法です。捨てる動作で戻せなかった場合には、おなかで押すという対応も可能です。

 この方法に変えたメリットは、パーム漏れのリスクが減少するだけでなく、手がより“死んだ状態”になって自然に見えるという事です。指に力が入っておれば、どうしても手全体が少し硬い雰囲気になりますが、親指をほとんど脱力させた状態では、指がリラックスされる結果、パームした手が自然になるという事です。その結果、カードの出現も不思議になりますし、この葉カードへの移行でも持ち替えなしで移行が可能です。

 公開サイトなので詳しい事は書けませんので、この話を読んだだけで目から鱗になる読者は少ないと思いますが、ここでお伝えしたかった事は、基本技法でも細かな改良の余地がある事で、“パームは動かしても良い”さらに“パームを動かせる位のリラックス感が大事”という見方がある事を知って頂ければと思います。

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