古川令

カードのバックのデザインについて

 以前にある著名な方から、「基本的にトランプのバックは白い縁取りがあるので、ミリオンカードでバックに縁のないカードを使うのは望ましくない」というご意見がありました。確かに究極の理想を言えば、バイスクルを使ってサロンマジック的に見せられるのが、一つの完成形とは思いますが、手が小さいというハンディからも目指せる方向ではありません。縁のパーム漏れを防ぐには、トップのカード1枚だけ変えれば良いとの見方もありますが、私はファンは表も裏も見せられるべきと考えますので、トップの1枚だけ変えても問題は解決しません。

 ミリオンカードで使用するカードとしては、バイスクルのようなスタンダードのカード、Beeなどのフチなしカード、ニールセンカードのような特殊なデザイン、さらに最近は真っ白なカードやカラーカードなどまでありますが、どこで線を引くのが妥当と考えるかについて私見を述べたいと思います。

 結論から言えば、私は「実際に使われているトランプのデザインかどうか」という明確な基準を持っています。「トランプの裏には白い縁がある」というのは確かに一般的ですが、BeeやSteamboatなど縁の無いデザインも存在しますので、縁の無いカードでも問題ないとしています。一方、ジャンボカード、マンモスカードは縁の無いデザインは見た事ありませんので、自作する場合でも縁があるデザインとしています。

 
 学生時代に使っていたSteamboatです。
 卒業後も、このカードケースに薄いカードを入れて演じていたので、使い込んだカードケースだけ残ってました。バイスクルではなく、敢えてSteamboatのケースをつかっていたのも、私のこだわりでした。
 今の若い人は知らないと思いますが、消費税の前の時代、麻雀などギャンブル性の高い商品にはトランプ類税というのが課税されていました。蓋の証紙になつかしさを感じます。

 要するに、「トランプ」か「マジックのための特別な紙」かで一線を引いています。従って、指の部分の縁だけ黒くしたカードとか、トランプの表の印刷が無いカラーカードなどを否定する意図はありませんが、私には使いたいという気持ちはありません。見せたいのはトランプのマジックです。

 蛇足ですが、実在するのかしない(マジックのための道具に見える)のかは、私にとってはこだわりポイントです。例えばロープやシガレット、ポーカーチップやCDなどは実在しますが、シンブルやミリオンフラワーなどは明らかにマジック用です。特に丸さを感じないウォンドは、私には違和感があります。今は定番の四つ玉も最初はビリヤードボールでしたし、手練マジックの理想は、ギミックは使っても、基本的に馴染みのある素材で不思議に見せられる事と考えます。

 話をカードに戻しますと、ファンニングパウダーからパラフィンワックスに変えた結果、カードの汚れの問題が生じました。カードの汚れは意外に良く見えてしまい、サロンマジックの距離で、客席からロウを塗っているかどうかが判る事も珍しくありません。通常のトランプにない汚れがあると、普通のトランプではなくマジックのための特殊加工したカードになってしまいますので、私にはカードの汚れの方がバックの白縁以上に気になる問題でした。以前にペットボトルのキャップでの汚れ落としを紹介しましたが、さらに画期的な方法を見つけましたので、次回にご紹介します。

年齢とともに難しくなる事        パラフィンワックスの汚れ落とし