平川一彦

ベーシック・ムーブ

第2回

はじめに 2

 第1回目で私は、長年カードマジックを演じている人でも、基本テクニックを知らない人がいると言う事を書きました。 そこで、今回はカードの基本テクニックを私なりに解説してみたいと思います。

 マジックにおける"テクニック"は英語でtechniqueと書き、technic(産業技術)とは違います。 そのtechniqueを日本語に訳すと"技法、技功、手法、技、手腕、こつ"であり、我々はその中の"技法"をよく使っています。

 よく「技法はトリックを行う上の単なる手段に過ぎない」と言う人がいますが、それは機械的な見方に過ぎません。 マジックのテクニックは、その訳の中にもう1つ"表現手法"というのがあるように、技法はトリックを行う上での隠れた"表現手法"です。

その"方法"の中には、心理的、論理的、言い換えるとマジックを行う上での必要な見せ方、つまりタイミングや視線、手の位置やその力加減、他に、ミスディレクションやマナー、ステージ効果をあげるための照明や音楽などが全て含まれています。 したがって、そのテクニックを考えない人が演じたトリックを見ても、何の感動もしないでしょう。

 カードトリックで我々がよく使用する基本テクニックの中に、オーバーハンド・シャッフルがありますが、それに関して次のようなエピソードがあります。

 当時、ある新聞にマジックの連載があり、その中で、このオーバーハンド・シャッフルを解説していましたが、私はその頃、このシャッフルの正確なやり方を知りませんでした。 そこでは、デックの持ち方、手の位置、シャッフルの仕方などを詳しく解説していて、私はその中の「左手に持っているデックのインナーエンドから、ちょこんと左手の小指の先が出ていますね。これが大切なんです」という言葉に非常に興味を惹かれました。

 その時は、なぜこの小指の先が大切なのか分かりませんでしたが、後日それを直接聞く事が出来て"なるほど"と関心したものです。
しかも、原書でこのシャッフルを知ったときに、そこにもその通りの事が書かれてあり、とても驚いたのを今でも覚えています。

 それでは、次回より基本の解説に入ります。

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