平川一彦

私とエド・マーロー
第14回 (サイド・スリップ1)

 今回は、マーローから少しサイド・スリップしてみましょう。

 英語の“Magic”を、我々は日本語で魔術・奇術・手品・マジックと言ったり、書いたりしています。この“Magic”には、他に、イリュージョン・ミスディレクションなども含まれています。

 最近の日本語の手品本を見ていると、内容がバラエティー豊かで、楽しくて、面白くて、読んでいて飽きません。私がマジックをやり始めた頃に、手に入れた日本語の手品本を見ると、今ほどバラエティーに富んでいなく、堅苦しく、“手品・奇術・魔術”の順に解説してありました。

 そんな私も、やっていくうちに、クロースアップ・マジック、フロアー・マジック、プラットフォーム・マジック、ステージ・マジックという言葉を知るようになりました。

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 その中の“クロースアップ”という言葉ですが、これを英語で書くと“close up”で、発音をあえてカタカナで書くと、“クロースアップ(クロゥスアップ)”となると思います。

 マジック用語については、日本でも、“close”を、“クロース”と発音するのが今では主流になっているようです。その意味は、接近した、親密な、きめの細かい、ぴったり合った、秘密の、すぐ近くに、などです。もし“クロゥズ”と発音してしまうと、閉じる、閉まる、終わる、の意味の“close”と、他に、衣服の意味の“clothes”になってしまいます。

 マジック以外では、今でも、“クロース”と発音すべきところを、“クローズ”としてしまうことが多いようです。例えば、カメラが被写体に接近する動作は、日本語では“クローズアップ”と表現されがちですが、本来の意味からすると、“クロースアップ”が正しいはずです。

 なぜ、日本語では“クローズ”が主流になったのでしょう?これは、あくまでも私の想像ですが、外国人が発音したのを日本人が聞き違えたか、あるいは、“クロースアップ”と発音すべき“close up”を、誰かが“クローズアップ”と読み違えて、それが普及してしまったからではないでしょうか。

 皆さんの中には、そんな事は、どっちでもいいじゃないか!日本人なんだから、しかも、“クローズアップ”で通っているのだから、そんな細かい事を言わなくてもいいじゃないか!という人も、いらっしゃると思います。私のように、原書でマジックをやっている者は、どうも神経質で、細かいことまで気にする性質なんですね。ということで許して下さい。

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