平川一彦

オン・ザ・テーブル
第3回
コインペネトレーション

 ちょっとしたコイントリックを紹介します。 私が今から約40年前に、1枚のコインが硬いテーブルの表面を通り抜けるこのトリックを初めて見た時は正直言ってショックでした。

現在は多くのマジシャンがこのテクニックを行っていますがその当時はあまり知られていないものでした。
少し時が経ってからこの解説を見つけた私は非常に嬉しかったことを記憶しています。

それではこのエドワード・マーローの“コイン ペネトレーション”をチャーリー・ミラーが解説した原文を訳してみますが、片手に持ったグラスをどのようにテーブルの下へやり、そして、テーブルの上に出してくるのかがポイントになります。


エド・マーローは多くの事を思いつく人です。
私(チャーリー・ミラー)が、もっと複雑な説明と同じくらい効果的だと思うこのコインペネトレーションは、今まで私が見た中ではもっとも見事で即座にできるものの一つです。

他の方法と違って、1枚のコインと1個のグラスあるいは、ブリキ製カップの他は何も必要としません。

コインはダイムからシルバーダラーまで、どんな単位のコインでもできます。
そして、お決まりのラッピングはないので、時間も無駄に使いません。

1枚のコインをテーブルの上に置いて、それをゆっくり手で擦ると、テーブルを貫通してしまいます。
そして、マジシャンがテーブルの下で持っているグラスかカップにコインの落ちた音が聞こえます。

ルーティーン

  1. 単純なことがここでの最も重要な点です。左手はグラスの両サイドを握って持ちます。 それをテーブルの下に置きますが、まず、左手を極端に左側へ伸ばします。<写真1>はその過程です。
    これは、コインが、テーブルの上にある手から、グラスに本当に落ちたのかなという、お客の疑いを完全に取り除くための、このトリックの非常に重要な特徴です。
  2. 写真1
    写真1
  3. マジシャンは椅子に座って、コインをテーブル上の自分の前、約20cmの所へ置きます。 グラスを左手に取りコインの下、いやむしろ、テーブルの下というかコインが置いてあるその真下に置きます。
    それには、左肩をテーブルの方へ動かすという事が非常に重要です。
    しかも、自然に、そして、やりすぎないように行います。
    すなわち、その目的は、グラスを体から離して持っているという印象をお客に伝える事です。
  4. 次に右手をコインの上へ持ってきます<写真2>
    手のひらでなく、指をコインの上へ被せます。そして、手をこっそりと前方へ動かします。 そうすると、コインは、第2関節のすぐ下にあります。
    手を、小さい円を描くように動かし始めます。 こうすると、コインは手首の方へ、ゆっくりと進みます(私は、この動きを説明するうまい言葉が見つかりません。)。 コインが手首のすぐ下にくるまで、その動きを、ゆっくり、非常にゆっくりと続けます<写真3>
  5. 写真2
    写真2
    写真3
    写真3
  6. その間に、左手はグラスをテーブルエッジの方へ、つまり、右手首のすぐ近くの右前腕の真下に動かします。
    そして、グラス全体はテーブルエッジから突き出さないで、そのグラスの円周の約半分をテーブルエッジから突き出します。再び<写真3>参照。
    実際に行う時は、右腕は<写真3>に示されているより、体に対してさらに直角になるように注意します。コインは手首にさらに近づきます。
  7. コインがグラスの中へ落ちるやいなや、左手はグラスとコインの両方をテーブルの下の中央へ移動させます。 右手はその動きのまま前方へ進めて、手のひらを上に向けます<写真4>
    その動作は右手が常にテーブルの中央にあるという印象を、どのようにして引き起こすかに注意します。 しかし、これは非常に理解しにくい事です。
  8. 写真4
    写真4

注:解説はここで終わっていますが、最後にグラスをテーブルの下から取り出し、中のコインをテーブルに放り出して終わります。

"Coin Penetration"


私は、エド・マーローに初めて会って、彼のこのトリックを見た時には、全く、ショックでした。というのは、左手が左側へ行く動きも、グラスをテーブルの下へ置きにゆく動きも、私に何の疑いも起こさせませんでした。

このトリックを上手に行うには、かなりの練習が必要ですし、また、両サイドにお客がいないことも確かめなければなりません。

もし、両サイドにお客がいて、トリックをしなければならない時は、その客に何か物を持たせるという事が必要です。これは妙な話ですが、彼らの注意をその物の方に引きつけておく訳です。

一つのヒントとしては、3枚のコインを取り出して、そのうちの1枚を選び、残り2枚のコインをそれぞれのお客に渡します。 マジシャンは、持っている1枚でコインロールを行い、同じように試してもらいます。 お客はそれに興味をそそられて、このトリックの方にはあまり集中しないでしょう。

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