平川一彦

パンドワー
第18回
エニー デック ユニバーサル

現象

 ジョーカーが3枚の選ばれたカードに変装して最後にはブランクカードになってしまいます。

準備

・ダブルフェイス カード2枚
(表面がスペードのQと裏面がハートの9(以下SQ/H9と表記)。)
(表面がジョーカーと裏面がスペードの5(以下Jo/S5と表記)。)

・赤または青バックのブランクフェイス カード1枚
(ここでは対比のために赤バックのブランクフェイス カード,以下BFCと表記。)

・輪ゴム1本
・デック1組(これは客から借りた方がより一層の効果があります。)
以上のカード3枚をフェイスからトップに次のようにセットします。

SQ/H9(SQをボトム面)、Jo/S5(Joをボトム面)、BFC。

以上3枚を輪ゴムで横掛けにしてフェイス面を身体の方に向けてコートの右サイドポケットに入れておきます。

手順

  1. 客から青バックのデックを借りたとします。そのデックで何か他のトリックをしている間に、または単にデックからこっそりとSQ、H9、S5を取り出してデックのボトムにSQ、その上(2枚目)にH9、そしてトップにS5をセットします。<写真1>この順番はポケットに入れたカードと同じです。
  2. 写真1

  3. トップとボトムカードの位置を変えないリフルシャフルを行ってからデックをテーブルに置きます。そして右手をデックに近づけて、左から右へ2回デックを分けるジェスチャーをしながら客に「これを同じ位の3つの山に分けてください。」と言います。客がデックを3つの山(パケット)に分けるとSQとH9はパフォーマーから見て左端パケットのボトムに2枚、そしてS5は右端パケットのトップにあります。
  4. 右手で左端のパケットを取り上げて両手間に広げて「これは貴方がカットした内の1つです。」と言ってから、スプレッドを左手に戻す時にボトムから2枚目のH9の上に左手小指のブレイクを作り、右手を持ち替えてパケットの両エンドを上からエンドグリップで握ってブレイクを右手の親指に移し変えます。<写真2>
  5. 写真2

  6. 次に左手の親指で右手に持っているパケットのトップカードを左手の平に剥ぎ取りますが、同時に左手の他の4本指でボトム2枚のカードも一緒に左手のトップカードの下に取り去ります。しかしトップカードとこの2枚の間に左手小指のブレイクを作ります。<写真3>そして直ぐに右手パケットを左手パケットの上に移動して素早く右手パケットの下に左手パケットのトップカードをもぎ取ってしまいます。右手はパケットをテーブルの元の場所へ置きます。
  7. 写真3

  8. 左手はSQとH9を1枚のカードとして持っています。右手は2番目(中央)のパケットをエンドグリップで取り上げて、これも左手の親指でトップカードを左手のカード(実際は2枚)の上に剥ぎ取りますが、左手小指にブレイクを作ります。そして直ぐに右手を左手パケットの上に持って来て左手のトップカードを右手パケットの下にもぎ取ります。左手は2枚のカードを少し広げて右手はパケットをテーブルの元の場所へ置きます。<写真4>
  9. 写真4

  10. 次に右手は最後のパケットを取り上げて、左手の親指で右手パケットのトップカード(S5)を今度は普通に左手の少し広げた2枚のカードの上に剥ぎ取ります。右手はパケットを元の場所へ戻します。<写真5>
    そして右手は左手に持っているカードをトップから1枚ずつテーブルに置いてあるパケットの下に右から左へフェイスアップで置いていくとその順番は<写真6>のように左から右へSQ、H9、S5になっています。
  11. 写真5
    写真6

  12. ここでパフォーマーは「私は変装の名人のジョーカーを持っています。」と言いながら右手で準備しておいた3枚組のカードをポケットからそのフェイスを客に見せないように取り出して左手に持ち、右手で輪ゴムを取り外してパフォーマー近くのテーブルにトスします。(このカードは1枚と言う想定なので、3枚と言う事が分からないように注意します。訳者後書き参照)
  13. 今、カードは左手にフェイスダウンで持っています。パフォーマーは客にジョーカーを次のようにして見せます。つまり、右手は<写真7>のように左手に持っているカードの両エンドを上からエンドグリップで握り、左手の人さし指または中指でボトムカードの右上コーナーのインデックス部分をバックルしてその上の2枚を右手で取ります。
  14. 写真7

  15. 左手は1枚のDFC(SQ/H9)をギャンブラーズ パームして、手の平を上に向けたまま手首から先を気持ち内側に曲げてカードが客から見えないようにします。そしてここで客を見ながら右手をパームアップしてジョーカーを客に見せます。<写真8>
  16. 写真8

  17. 右手はパームダウンしながらカードを左手のパームカードの上に置き、カードの両エンドを上からエンドグリップで握ってフェイスダウンで持ちます。左手はテーブルからSQを取り上げてそれをフェイスダウンにして持ち、右手は持っているカードで<写真9>のように左手のフェイスダウンカードのバックを擦ります。
  18. 写真9

  19. 左手はカードをフェイスアップにすると同時に右手もパームアップして両手のSQを示して「ジョーカーがスペードのクイーンに変装しました。」と言います。<写真10>左手はレギュラーのSQをフェイスアップのままテーブルパケットの下へ戻します。
  20. 写真10

  21. 次に右手の平をパームダウンにすると同時に左手はテーブルのH9を取り上げてフェイスアップのまま右手のカードの下(フェイス)に置いたら直ぐに右手の親指は右手に持っているカードのDFCのSQ/H9を左手のフェイスアップのH9の上に放します。
  22. そして左手は、まだH9を示している2枚のカードを1枚のようにして左側へ動かし、右手の親指と中指がH9(2枚)の両エンドの縁に沿って右上コーナーと右下コーナーに接触するまでH9を左側へ動かします。<写真11>
  23. 写真11

  24. 右手の親指と中指が両コーナーに接触したら左手の親指と他の4本指は<写真12>のように H9(2枚)の左サイドを掴みます。
    そしてH9(2枚)の左サイドを掴んでいる左手は、そのカードを右手の親指と中指を軸として下方へ<写真13>のように回転して左手のディーリングポジションにフェイスダウンで持ちます。
  25. 写真12
    写真13

  26. この時、左手のカードが下方へ回転するのに合わせて右手のカードも一緒に少し左側へ動き、ちょっとの間、左手のフェイスダウン カードをカバーします。しかしながら、そのカバーしたときに右手は持っているカード(2枚)を内側(パフォーマー側)へ動かして<写真14>のようにインジョグの位置にします。
  27. 写真14

  28. アウトジョグのカードは2枚が1枚のように揃っていて右手はインジョグのカード(2枚)を1枚のように持ち上げ、パームアップしてジョーカーを示します。<写真15> 右手はカードを左手のカードのトップにインジョグの位置に戻します。
  29. 写真15

  30. 次にアンネマンのアライメント ムーブを行います。即ち、右手の指(実際は中指、薬指)をアウトジョグ カード(2枚)のトップに押し付けて、右手の親指はインジョグ カードのインナーエンドにそのまま付いています。<写真16>
  31. 写真16

  32. 次に右手をそのまま前方へ動かすと2枚のアウトジョグ カードのボトムカード(DFC)はインナーエンドで右手の親指に接触してインジョグ カードと一列に並び、レギュラーのH9は1枚になってアウトジョグ カードになっています。<写真17>
    次に右手の中指を<写真18>のようにアウトジョグ カードの右サイドに付けてそれを左手の親指を軸として左斜めに傾けます。
  33. 写真17
    写真18

  34. 右手はその状態から左手に残っているカード(3枚)の両エンドを上からエンドグリップで握ります。そして左手の親指と他の4本指は<写真19>のように斜めのアウトジョグ カードを掴んで、右手は握っているカード(3枚)で左手のH9のバックを擦るように前後に動かします。
  35. 写真19

  36. この段階でH9は右手のカード(3枚)の間(ボトムから2枚目)に挟まれています。左手はH9を右手のカードから抜き取ってフェイスアップにターンしてH9を示し、右手もパームアップしてH9を示します。<写真20>左手はレギュラーのH9をフェイスアップのままテーブルの元の場所に戻します。右手はパームダウン します。
  37. 写真20

  38. いま、右手は3枚のカード(ボトム2枚はDFC、トップは赤バックのBFC)を1枚のカードとしてエンドグリップで持っています。次に左手はテーブルのS5を取り上げてフェイスアップのまま右手のカードの下へ置きます。今度は右手の親指で右手に持っていたカードのトップのBFCのインナーエンドを持ち上げて、左手は3枚のカードを1枚のように持って左側へ動かし、再度S5を示します。<写真21>
  39. 写真21

  40. そして既に解説したように左手はS5(3枚)を右手の中指と親指を軸として下方へ回転して左手にフェイスダウンに持ち、右手に残った フェイスダウン カード(BFC)の左上コーナーを<写真22>のように左手の親指と人さし指の間でスナップをしてから左手のカードのトップにインジョグして再度アンネマンのアライメントムーブを行います。
  41. 写真22

  42. 結果として、左側へ斜めに突き出ているアウトジョグ カードを左手で掴み、そのバックを右手のカードで擦る動作をします。左手はカードをフェイスアップにしてS5を示し、右手もパームアップして同様にS5を示します。<写真23>
  43. 写真23

  44. 次は、もし席に着いての演技の場合は、左手がS5をテーブルの元のパケットの下に置くために右手の前を横切る時に右手をカバーします。その時に右手はトップのBFC以外(2枚のDFC)をラップします。<写真24>
  45. 写真24

  46. ここでパフォーマーは「ジョーカーは、色々な変装をして少し疲れたようなので1日休みを取りました。ここで彼の休日を見てみましょう。」と言って右手を前に出して持っているカードをスナップターンしてブランクフェイスを示し、「やはりジョーカーはお休みのようですね」と言って演技を終わります。

    もし立ち演技の場合は、2枚のDFCを左手にギャンブラーズ パームをするかクラシック パームをして処理します。例えば、パフォーマーは右手に1枚のカードをフェイスダウンで持ち、左手に2枚のカードをパームしているとします。ここで前記の台詞を言って身体を前方へ倒しながら右手をテーブルのパケットの方へ出して持っているカードをスナップターンしてカードのブランクフェイスを示します。そして「やはりジョーカーはお休みのようですね。」と言って終わります。この身体を前に倒しながら右手をテーブルの方へ出す時に左手を何気なくズボンまたはコートの左ポケットに入れて2枚のDFCを処理します。

    "The card magic of Edward Marlo" by Edward Marlo, P.222~224,


(訳者後書き)
原案では、ポケットに入れている3枚のカードに輪ゴムを掛けていますが私は輪ゴムを掛けないで3枚をポケットに入れています。何故かと言うと、原案のこの輪ゴムは3枚のカードをポケットから取り出す時にカードがずれないようにするためだと思います。しかし輪ゴムが掛かっていると客は1枚のカードではなく数枚のカードだと思いがちです。実際に私はポケットに手を入れた時に3枚の周囲を5本指で握り、1枚のように揃えて取り出します。それでもカードはずれません。また、原案は台詞や一部のテクニックを詳解していませんので私なりの方法で解説しました。

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