平川一彦

パンドワー
第21回
リピート・リピート・リバース

現象

 ピークしたカードが魔法にかかったかのように表向きになっています。そのカードを裏向きにするのですが、再び表向きになってしまいます。今度はそのカードを取り除いて他のカードで行いますが、やはりリバースを繰り返します。

準備

ダブルバックカードの両面左側半分がそれぞれ違った種類の表向きカードになっているハーフ・フェイク・カード(HFC)1枚。このカードは、両面同色のダブルバックカード(DBC)の左側半分にスペードの5の半分の表向きカードを貼り、今度はこのDBCを縦(パフォーマー側)に裏返して、同じ左側半分にダイヤのクイーンの半分の表向きカードを貼って作ります<写真1・2>

    写真1
    写真2

このHFCは他のカードと厚さが違うので、ショートカードの役目も果たしています。従って、コーナーをカットする必要はありませんが、心配ならば右上コーナーと右下コーナーをカットしてショートカードにします。

初めにレギュラーカード1枚をフェイスダウンでテーブルに置き、その上にHFCのスペードの5を左側にして重ねます。次にデックからレギュラーのスペードの5(S5)を取り出して、フェイスダウンでHFCに重ねます。さらにレギュラーのダイヤのクイーン(DQ)を取り出して、これもフェイスダウンで3枚のカードに重ねます。もちろんこのDQはHFCの裏側に貼ってあるのと同じカードです。

この4枚のカードをデックのボトムにセットすると、ボトムからトップに向かって、レギュラーXカード(フェイスダウン)、HFC(S5が左側に見えている)、レギュラーS5(フェイスダウン)、レギュラーDQ(フェイスダウン)の順になっています<写真3>。このデックを、演技を始めるまでケースに入れておきます。

写真3

手順

  1. パフォーマーはデックをケースから取り出して、フェイスダウンでしかも横長にしてテーブルへ置きます。HFCのS5はパフォーマー側にきています。ボトムにセットしたカードの順番を変えないテーブル・リフル・シャフルを行い、コンプリートカットをしてセットをデックの中央に持ってきます。
    デックを左手に揃えてフィンガーチップ・ピークの形に持ちます。HFCのS5は左側にきています。客にピークをしてタイミング良くレギュラーのS5をフォースします<写真4>。そしてオールアラウンド・スクエヤーをしながらデックの両エンドを逆にして、HFCのS5を右側に持ってきます。
  2. 写真4
  3. パフォーマーは何気なくフェイスダウンデックを両手間に広げて、客のカードがこの何処かにあることを言います。デックを左手に揃えながら再度オールアラウンド・スクエヤーで両エンドを元に戻して、HFCのS5を左側に持ってきます。
    そしてデックをフェイスダウンで左手に持ち、右手の平で上からカバーします。つまり、カップ状にした両手の間にデックを保持しながら、客に覚えたカードの名前を聞きます<写真5>。客が答えたらパフォーマーは、デックを保持している両手をちょっとだけ強く上下に動かして何か現象を起こしたような動作をします。
  4. 写真5
  5. それからHFCのS5が見えるまでデックを両手間に広げていきますが、最初、広げながら右手を少し上下に動かして、初めのカード数枚を一種のばらけたジョッグの形にします。客の覚えたカードのスペードの5(実際はHFCのS5)が現れました<写真6>
  6. 写真6
    この時、左手の親指の指先がHFCのS5とその上のフェイスダウンのレギュラーカード(S5)を押さえていることに注意します。また実際には、スプレッドの下でも右手の薬指の指先がHFCとレギュラーのS5をきちんと保持しています。この薬指と小指を使って次のようにS5を一見、フェイスダウンにしたように見せる、最良の方法を行います。

  7. パフォーマーは身体をほんの少し左向きにします。HFCのS5を一見、フェイスダウンにしますが、ここで次のように行います。今、左手の親指の指先は、2枚のカード即ち、HFCのS5とその上のレギュラーカードのS5(フェイスダウン)の左端(縁)にあります。次に右手は、普通にカードをひっくり返す時のように上方へそして左の方へ動かします。

    しかしながら、その時に右手の薬指と小指の指先もその2枚のカードを押し上げ始めます。この押し上げる動作は、2枚のカードの左サイドを押さえている左手の親指の指先がさらに手伝っています。実際にひっくり返す動作は、右手で行う一種の短い上下運動のようなもので、<写真7>は、まさに2枚のカードをひっくり返そうとしているところです。
  8. 写真7
  9. <写真7>のようにしてカード(実際は2枚)をひっくり返したら、右手は一種の留め金で留める動きのように下方へ下ろすと同時に少し右へ動かしてHFCの半分のバック面を示します<写真8>。これはS5をフェイスダウンにターンしたと強い錯覚を起こさせます。レギュラーのS5はHFCの真下でフェイスアップになっています。
    カードをフェイスダウンにターンする時に身体を少し左向きにするのは、その動作をさらにカバーすることになります。
  10. 写真8
  11. デックを揃えて再びカップ状にした両手の間に保持して、上下に少しだけ動かす動作をします。デックを両手間に広げると、裏返したはずのS5が再び表向きで現れます。これはレギュラーのS5です。ちょうどその場所でデックを分けて、そのS5を右手のパケットのボトムにサイドジョッグに取り<写真9>、右手はそのカードをフェイスアップでテーブルへ落します。
    写真9
    次に右手のパケットを左手のパケットの下におくと、HFCがデックのボトムにきます。さらにHFCのダイヤのクイーン(DQ)が右側にきています。その真上はレギュラーのダイヤのクイーンです。
    そして今度は見た目は他のカード、実際はこのDQを使って今までの現象を繰り返します。HFCのDQが右側にきているので、一度オールアラウンド・スクエヤーでそれを左側に持ってきます。(その時ボトムカードが見えないように注意します。)
  12. テーブル・リフル・シャフル、コンプリートカット、ピーク<写真10>と手順を続けてゆきます。
  13. 写真10

    『M.I.N.T. vol.Ⅰ』by Edward Marlo、P.222~225


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