氣賀康夫

雨男の話
(A Story of a Rainy Man)


    <解説>
    この奇術の種はたいへん優れた原理ですが、すでに古典になりつつある感があります。 その種は実に観客の意表をついています。ここでは、効果的な演出をねらって、雨男に関するユーモラスな話を題材にして、週間天気予報のデザインを使います。

    <効果>
    一週間、すなわち日曜日から土曜日までの表示のある台紙に、7日分の週間天気予報のデザインの描かれた帯を挟み、観客に任意の曜日の個所をハサミで切ってもらいますが、切った個所がおかしなことに必ず「雨」の日になってしまいます。これを数回繰り返しますが、なぜか、切った個所は必ず「雨」の日になります。

    <用具>

  1. 使うものは紙で作られたものばかりです。見本を<写真1>に示しますので、それをコピーしてご活用ください。なお、コピーは白黒ですが、色鉛筆などで太陽をだいだい色に彩色すると演出がそれだけで華やかになります。このデザインはテレビのお天気番組で使われる絵に近いデザインにしてあります。
  2. <写真1>
  3. 次に一週間の日曜日から土曜日までの表示のある帯状の入れものがあります。これを演技で5枚使いますが、それも消耗品です。見本は<写真2>です。これもコピーは白黒ですが、曜日の文字に色鉛筆で彩色すると綺麗です。お勧めの色は次のとおりです。
     日(だいだい)月(白)火(赤)水(青)木(黄土色)金(黄色)土(茶色)
  4. <写真2>
  5. よく切れるハサミが必要です。
  6. 最後に、よろしければお手伝いの観客にプレゼントするための傘を用意しましょう。これは装飾品店、文具店、玩具屋などで打っている小さな玩具の傘が適当ですが、その入手が難しいときには安い使い捨てや折りたたみ傘などでもいいでしょう。

    <準備>

  1. 一週間の曜日が一列に並んで表示された台紙があります。これを、表に一週間の表示が出るように二つ折りにして用います。この台紙5枚が消耗品であり、それは、その都度消費されてしまいます。
  2. 週間天気予報をデザインした帯を9枚用意しました。この中で、実際に演技で使われるのは5枚です。1枚は、左から四つ目に傘マークがある帯、これを仮に「春」の帯と呼びましょう。それから種の帯が4枚あります。それらは次のとおりです。
      (1) 一週間7日全部が雨マークのもの、これを「梅雨」の帯と呼びましょう。
      (2) 両端が二つに分断された雨マークでデザインされた帯が二枚あり、中に雪の日がある方が「冬」の帯です。
      (3) そして、もう一方が「夏」の帯です。
      (4) さらに、漢字が書かれた帯が1枚あります。これを「秋」の帯と呼びましょう。
      以上の5枚が消耗品です。
  3. さらに、予備の週間天気予報デザインの帯が4枚あります。これらの帯は並べて例示として用いるためのものであり、消耗品ではありません。なお、最初のセットは、束の下から「梅雨」「夏」「冬」「秋」の順に準備しておき、一番上に「春」を置きます。その中間の4枚が予備の帯です。セットのとき、「秋」「冬」「夏」を上下逆にセットしておく方が動作が楽です。

    <方法>

  1. 次のように話を始めます。「男性には、雨男と、晴れ男とがあると言われます。晴れ男は、何かというと、いい天気に出会うという誠にいい星の下に生まれた方です。こういう人にとっては運動会や遠足の日は必ず快晴の日になるのです。ところが、雨男はその逆であり、旅行だとかゴルフだとかに出かけるという日に限って、悪天候に見舞われます。実は、なぜか私は典型的な雨男です。そこで、今日は、お客様が雨男と一緒にいるとどういう経験をするかをこれからご説明をいたします。」
  2. 帯の束を出して、上から4枚を広げてテーブルの上に並べて、まず「春」の帯を示して次のように説明します。「これは週間天気予報の一例ですが、日曜日は晴れ、月曜日は晴れ後曇り、火曜日は曇り、水曜日は雨、木曜日は雪、金曜日は雪後曇り、土曜日は曇り後晴となっています。」ここで、この帯を曜日の台紙にはさみ、「それでは、まず、この水曜日の真ん中の縦線のところをハサミで切ってみてください。」とお願いします。このとき、曜日の升の真ん中の上下に点線のあるところで正確に切ってもらうことが肝要です。
  3. そして、切れた週間天気予報の紙の切片を示し、切った個所が「雨」マークのところであることを確認します。そして、「水曜日は水という字を書きますから、雨が多いのです。」と説明します。
  4. 次にあと3枚の帯に注意を引き、いろいろな週間天気予報の週がありえるということを説明します。
  5. ここで、帯の束を揃え、一番下から、表を見せないように、一週間全部が雨のマークの「梅雨」の帯をそっと取り、それを裏向きにして一旦テーブルの上に置きます。
  6. ここで、曜日の台紙を一枚取り、中にこの帯を置き、そして、曜日の表示されているふたを閉めます。そのとき、帯の表を見せないように注意することが大切です。
  7. いまや、この台紙の上には日曜日から土曜日までの曜日が表示されています。そこで、観客に「では、今度は、一週間のうち何曜日にご一緒にゴルフをなさりたいかをお決めになってみてください。」と言います。曜日が決まったら、ハサミを手渡して、その曜日のところから台紙を二つに切断してもらいます。
  8. 切り終わったら、左側の台紙の切片の中から切られた帯を1cmほど切断個所の方向に引っ張り出します。次に、右側の台紙の切片の中からも同様に中の帯を1cmほど引っ張り出します。そして、そのまま両方を並べてテーブルに置きます。すると、切った箇所が雨マークだったことが確認できるでしょう。そこで、「ほら、申しあげたとおり、私がご一緒すると、その日が雨になるという話が本当であることがわかりますね。」と言います。
  9. ここで、左右両方の台紙をひとつずつ開き、帯がテーブルの上にヒラヒラと落ちるようにします。そして、それをテーブルの上に並べます。すると、一週間7日が全部雨のマークであったことがわかり、観客は「一杯食ったか!」と苦笑するでしょう。そこで、「そうそう、これは六月の梅雨シーズンの週間天気予報でしたから、雨に会うのは当たり前でしたね。」と釈明します。
  10. 次に、台紙をもう一つ取って、上下を広げます。そして、「今度は、冬の時期を選びますから、雨の日が一週間のうち一日しかありません。ですから、雨の日を選ばないようにして欲しいのです。では、何曜日をゴルフの日に選ぶかを頭の中で考えておいてください。」とお願いします。
  11. ここで、帯の束の下から、「冬」の帯を取り、それを台紙に置きます。このとき、大切なことが一つあります。それは、帯が曜日の紙と逆向きでなければならないという点です。つまり、術者側に帯の表を向けて上下を逆の向きに台紙に置くのです。そのためにあらじめセットのとき帯を逆向きにしておいたのでした。そうしたら、台紙のふたをして、曜日の面をよく示します。そこには日曜日から土曜日までの表示があります。「では、お選びの曜日は何曜日でしたでしょうか。はい、では、その曜日の表示のあるところにハサミを入れて切ってください。」と言います。
  12. 切り終わったら、まず左の切片を取り、台紙を開いて中の切られた天気予報の切片がテーブルの上にヒラヒラと自然に落ちるようにします。次に右の台紙を開き、同様に中の切られた紙が同じようにテーブルに落ちるようにします。そうしたら、落ちた二つの紙を拾ってテーブルの上に並べます。実は、このとき秘密の種のお陰で、切った位置が密かに交換されてしまうのですが、観客はそのことに気がつかないでしょう。ですから、たまたま雨マークのある曜日のところを選んで切ってしまったという錯覚に陥ります。
  13. ここで、「お客様がお選びの日が、雨の日になってしまったことはご納得と思いますが、これは私が雨男のためというわけではなく、単なる偶然ではないかとお疑いになられるかもしれません。そうです。確かに、確率1/7で、そういう結果になる可能性があることは否定できません。では、念のため、もう一度、今度は夏の日で運試しをしてみましょう。」と言います。
  14. そして、観客に「では、なるべく、雨に会わないようによく考えてください。先程は、お客様が曜日をお選びになってから、私が週間天気予報をここに入れましたが、今度は、天気予報の紙を先に入れます。」と言い、種の「夏」の帯を台紙に入れて包み込みます。ただし、前回同様、帯の方向を曜日と逆向きです。そのことが観客に見られないように注意しなければなりません。そして「では、ゴルフをプレーする曜日を頭の中で考えてお決めになってください。それを私に言う必要はありません。黙って、ハサミでその曜日のところをお切りになってください。」とお願いします。
  15. やることは一度目と変わりません。違うのは、台詞と演出だけです。そして、直前と同じように切片を調べると、再び、選りも選んで、一週間7日のうち雨マーク日のところをハサミで切ってしまったということに気づきます。「これで私が雨男であるということに納得がいきましたでしょうか。」と言います。
  16. 最後に次のように話を進めます。「ところで、この天気予報のデザイン自体が怪しいと言う方がときどきおられます。それでは最後に、このお天気マークを使わないで、秋の日の予報を使ってやってみます。」と言い、台紙に、漢字の「秋」の帯を挟みます。このときも向きが曜日の順と漢字の順が逆になることを忘れないようにしなければなりません。
  17. 「では、これが最後です。この日なら絶対に晴れと思われる日を選んで、そこにハサミを入れてください。一週間のうち雨の日はたった一日です。」と言います。最後に切った切片を調べると、はやり、たった一日だけ「雨」という字が書いてあるところを切ってしまったことに愕然とするでしょう。
  18. 最後にお手伝いの方に傘をプレゼントしましょう。「私が雨男であることはご納得なされたと思います。それでは私とご一緒するときは、これを忘れないようにしてください。」と言ってクライマックスとします。

第11回           第13回