氣賀康夫

ヘップバーンの予言
( Hepburn’s Prediction)


    <解説>
    最近のITテクノロジーの発展には目を見はるものがあり、残念ながらそのためにこの世から消滅していく運命にある奇術が生じます。筆者が学生時代に仲間と大いに楽しんだ「霊交術」がその好例で、現在の電子技術では、ごく簡単に「霊交術」ができてしまいます。しかし、だからと言って失望したものでもなく、一方で、それだから出来るようになる新しい奇術もあるのです。ここに紹介する奇術はTAMC池内和彦会員と筆者とが最近のテクノロジーで使われるようになったQRコードを活用して2007年に開発し、TAMCの新作として発表したものです。

    <現象>
    まず、術者は一枚の写真を紹介し、それは観客によってこれから選ばれるカードを予言することができる写真であると言います。<写真1> 写真を見るとそれはオードリー・へップバーンのブロマイド写真に見えます。次に、術者は観客に一組のカードから一枚のカードを選んでもらい、その表を見ないで裏向きのままテーブルの上に置いておいてもらうようにします。そうしたら、観客の中からカメラ付き携帯電話を持っている人の協力を求め、そのバーコードリーダー機能を使って先ほどの写真を撮影してもらいます。そうすると、携帯電話のディスプレー上にカードの名前を予言する次のような文章<写真2>が現れます。そこで、選んだカードを表向きにすると、それは確かに予言のとおり、ダイヤの4のカードであることがわかります。

     予言 
    あなたが選ぶカードを
    予言します。
    「◆の4でしょう。」
    予言者
    オードリー・ヘップバーン


    <写真1>
    <写真2>

    <用具> 

  1. この奇術に使う大切な写真は合成写真であり、その一部分に、コンピュータで読み取れるQRコードが書き込まれています。 <写真3>が池内さんが作成したQRコードです。 合成写真は筆者がヘップバーンのブロマイドを入手してきて手作りで作成したものです。 それを<写真4>にご紹介しますが、これには著作権がありますから、読者はご自身で適当なブロマイドを入手してきて、ご自分で写真2のQRコードをその中に埋め込んで合成写真をお作りになることをお勧めします。携帯電話のカメラでバーコードリーダー機能を立ちあげて、写真のQRコードの部分(背景になっている木の茂みの中にある四角いマーク三個で囲まれた正方形部分)を読み取れば、ディスプレーに上記の文章が現れます。
  2. あとは一組のカードを用意すれば十分です。

  3. <写真3>
    <写真4>

    <準備>  一組のカードに、ダイヤの4をフォースする準備をしておきます。ただし、演出上、フォースした後、選ばれたカードを直ちに見させないで裏向きのまましばらくテーブルの上に置いておいてもらうということが大切です。

    <方法>

  1. 術者は写真を取り出し、「この女性が誰だかわかりますか?」と質問します。知っている人が多いでしょう。「私はオードリー・ペップバーンの大のフアンでした。それは彼女がチャーミングな女優だったためですが、実は彼女には超能力があったからでもあります。では、今日はあまり知られていないヘップバーンの予言能力を実証してご覧に入れましょう。」と説明し、写真を観客の前に置きます。
  2. 一組のカードを取り出して、ダイヤの4をフォースします。選ばれたダイヤの4の表を見せないで、テーブルの上に裏向きの置いておくようにするためにはフォーシングの方法を選ばなければなりません。(例えばヒンズーシャフルフォースなどは不向きであり、リフルフォース、カットフォースなどが向いています。)ここでは、やさしいカットフォースを一つご紹介して置きましょう。
    1. 一組のカードのトップにダイヤの4をセットしておきます。
    2. カードを表向きにして、右手で真ん中あたりの1/3を引き抜き、左手のカードの上にヒンズーシャフル(花札の切り方)で切りませます。このとき底にあるカードの位置はくるいません。
    3. カードを再び裏向きにして左手に持ち、右手の中指をカードの向こう端にあてて、それを上から下にゆっくりとリフル(辞書の頁をくるような動作)をながら、途中で観客に指を差し込んでもらうようにします。
    4. 指が差し込まれたら、その個所でカードを分けて、それより上の部分を右手で持ちます。
    5. ここで観客に「いまカードに指先を差し込んでいただきましたが、何指をお使いになりましたか?」と質問します。観客は意外な質問で一瞬戸惑うかもしれませんが、「人差し指です。」などと応えるでしょう。筆者は「そうですか、大概の方は人差し指を差し込まれます。」と説明します。
    6. そう説明しながら、右手のカードを何気なくテーブルの上に置き、次に左手のカードを右手に取り、テーブルの上のカードと60度くらい角度をつけてその上に重ねます。
    7. ここで、「それではここの分かれ目のカードを取って裏向きのままご自分の目のまえに置いてください。」と言い、右手でテーブルのカードの上の山の部分をやや持ちあげ、左手でテーブルに残る山の上を指差します。
    8. 観客は言われるままに山の一番上のカードを取って自分の近くに置くでしょう。
    9. そうしたら、術者は右手のカードの山をテーブルの山の上のポンと重ねて、完全に揃えてしまいます。

  3. ここで、観客の中からカメラつきの携帯電話を持っている人の協力を求め、ヘップバーンの左側の木の茂みの部分(四角いマーク三個で囲まれた正方形部分)を撮影するようにしてもらいます。この部分を読み取ると、上記の文章がケイタイのディスプレーに表示されます。
  4. 観客に、その文章を読みあげてもらいます。これは、他の観客にも現象がよく理解できるようにという配慮です。
  5. そこで、テーブルの上のカードを指差し、「それではそのカードを表向きにしてみてください。」と言います。
  6. 観客がカードを表返すと予言のカードが現れるのでびっくりするでしょう。
  7. 最後に「ご覧の通り、ヘップバーンは亡くなる前に、今日、お客様がお選びのカードを正しく予言していたのでした。これでヘップバーンには不思議な予言能力があることがお分かりになったでしょう。」と説明して演技を締めくくります。

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