氣賀康夫

色の凱旋
Color Triumph


    <解説>
    「凱旋」(Triumph)というのはDai Vernonが考案したカード奇術の題名ですが、 あまりに魅力的な現象の作品だったため発表以来いろいろな研究家が同じ現象の奇術を提案することになりました。
    したがって、単にTriumphと言われたのでは、それがVernon の原作のことか、 その後に発案され別案のことかどちらかがわからない状況にあります。

    ところで、ここにご紹介するカラートライアンフというと、その原作者はDerek Dingleです。
    その現象はVernonの奇術と似ていますが、最後に使っていたカード全部の裏模様の色が変わってしまうという ショッキングなおまけのクライマックスがついている作品に仕上がっています。

    私は1970年に留学中にDingleと親しくお付き合いしましたが、 そのときお互いの作品について改案の情報を交換し合い、 その改案を発表することを同意しあいました。

    その結果、Dingleは彼の著書に筆者のFour of a Kindの改案を発表したのですが、 筆者はDingleのカラートライアンフの改案を発表する機会に恵まれませんでした。

    約束をしてから50年近い年月が経過し、今となっては感慨深いです。
    さて、読者の関心事は筆者がDingleの原案のどこを改良しようとしたかという点だと思いますが、それは手順全体の動作がごく普通のカード奇術のように見えるように最大限工夫をしたことです。
    筆者の恩師である高木重朗師も色違いのカードを2枚にして演ずる構成されたのですが、この場合、カードはヒンズーシャフルフォースで選ばせなければならないという制約があります。
    筆者の改案では色違いのカードが3枚あるので、カードを選ばせるときの景色がより自然になるように配慮されています。
    なお、Dingleは晩年アメリカで活躍しましたが、 もともと英国人ですから、それにちなんで、英語の題名のスペルを英国流にしました。




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