氣賀康夫

バックルカウント
Buckle Count


    <解説>
    バックルカウントは二十世紀になって広く使われるようになった素晴らしい技法です。
    一般にカードを複数枚持ち、それを数える動作で、実際の枚数より多く数えたり、少なく数えたりする技法をFalse Countと呼びます。
    多く数える場合には、例えば7枚を10枚に数えることが必要になるわけですが、そのような技法も幾つか提案されています。

    そして少なく数える場合には、逆に10枚を7枚に数えることになりますが、そのための優れた技法の一つがこのバックルカウントです。
    まず、原理を説明しますが、仮に10枚のカードを左手に持ち、それを7枚のように数えると考えましょう。
    その場合、左手のカードから右手にカードを一枚ずつ取り、それを次々にテーブルの上の置いていくことができるでしょう。
    しかし、そうすると最後の7枚目には右手には4枚のカードが残ることになります。
    この4枚を1枚に見せることは困難です。

    そこでバックルカウントでは何をやるかというと、この数え方で、 7枚目でなく6枚目に4枚をあたかも一枚の如く右手に取り、それをテーブルの置くのであれば、 最後の7枚目はたった一枚なので、さほど怪しまれないで7枚に勘定ができるのではないかという考え方です。
    でも、その場合、6枚目のとき、左手に残る5枚から4枚だけを一瞬で取りあげるのは至難の業ではないかということになるでしょう。

    そうです。確かに至難の業なのです。

    ところがその至難に見える動作を可能にすると、逆にそのフォールスカウント全体が自然に見えるという理屈になるのですね。
    そしてその至難の技を可能にする工夫がバックルという技法なのでした。

    バックルのやりかたはいろいろ提案されていますが、筆者は恩師石田天海師の方法が最も合理的であると考えており、 その方法をこの講座ではご提案します。

    なお、バックルカウントと同じ目的の技法にPush-off Countという優れた技法が開発されており、機会があればそれもご紹介したいと考えております。
    この講座では、さらにブレークを活用したバックルカウントに代わる方法をご紹介いたします。




第6回              第8回