氣賀康夫

光琳の燕子花図屏風の謎

<解説> このパズルのデザインは、筆者の構想としては、かなり前から頭の中にあったものです。それは光琳の代表作燕子花図屏風(根津美術館所蔵国宝)の絵に魅せられたためです。何とか、あの光琳のあやめで消滅パズルができないかと考えました。そしてあるとき、この絵柄を画きデザインを完成させました。消滅パズルとしては古典的なごく平凡な作品で図柄のあやめが2輪消滅するだけに過ぎません。ただし、絵は光琳の絵を模しているものであり、それにまつわる楽しい演出を用意してあります。

<用具> 用いるものは1枚の絵を3枚の切片に切り離したものです。(写真1)ただし、裏には次の文章を書いておくことにしましょう。
① 最小の切片      光琳の燕子花図は、
② 中間サイズの切片   二隻の金屏風、国宝です。
③ 大きい切片      そこに隠された秘密とは何?

写真1
写真1

裏

<演出>
1. まず、3枚の切片を並べます。最初の位置は最小の切片が左下の配置です。(写真2)次のように話を始めます。「この絵は、有名な尾形光琳のかきつばたの図を模写したものです。光琳は今から約300年前に活躍した狩野派の有名な日本画家ですが、根津美術館に所蔵されている国宝の「燕子花(かきつばた)図屏風」はとみに有名な作品で、左右二隻の金屏風になっています。そこには、合計沢山のカキツバタが光琳の手で描かれています。ところが、美術家の研究により、それが全部別々の花の絵ではなく、作品の中に幾つもの同じ花柄が、同一の下絵によって多数描かれていることが発見されました。光琳がどういう理由でそういうことをしたのかは今日謎とされています。そこで、私は光琳の謎を解きあかすためにこのようにカキツバタを模写してみることにいたしました。これがそうして出来あがった絵です。ところが、研究してみると、たいへん不思議なことが起こるようになったのです。ご覧下さい、この屏風では何輪のカキツバタが見えますか?」観客は数えて14輪と応えるでしょう。

写真2
写真2

2. 3枚の切片を裏返して、文章を読み上げます。「光琳のカキツバタ図は二隻の金屏風で国宝に指定されていますが、そこに隠された光琳の秘密とは一体何だったのでしょうか。」ここで、3枚の切片を再び表向きにしますが、今度は小さい切片を右下隅に配置します。見ても絵にあまり変化がないように見えますが、実は、かきつばたの数が12輪に変化しています。(写真3)

写真3
写真3

3. そこで、「もう一度確認しましょう。かきつばたが何輪あるか数えてみてください。」数えると何故か花は12輪しか見当たらない。そこで最後の台詞です。「確か、最初に数えたときはかきつばたが14輪ありましたね。ところが、いまあらためて数えてみると、その数は12輪であり、どこかに2輪が消えてしまいました。私の研究では光琳はこのようにかきつばたが消えることを恐れて、沢山の花を一つの下絵から画きあげたものだと考えます。光琳がいま生きていたら、それを何と説明するでしょうか。」

<後記> このパズルで語られる光琳の下絵の謎の話は本当の話です。ただし、絵に画かれたかきつばたが消えるはずはなく、それが消えたという話からは、眉唾の話が展開することになります。

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