坂本圭史

コレクター魂

 コレクションと言えば、とかく “収集した数”を競いがちである。しかし、そうだとすれば専門店に行けば幾らでも買う事ができる。
コレクションは“集めるための手間や苦労”に価値があるものだと私は思っている。つまり、入手が困難のモノを入手しようとする処に“コレクターの魂”があり、そのハードルの高さゆえ入手した時の感動もまた格別なのではないか?

定期券をリサイクルして作られたカード

 ここに掲げたカードは、一見、何の変哲もないものであるが、入手までに特に手を尽くしたことから忘れられないカードである。特徴を挙げるとすれば3つある。

 第1に、ポーカーサイズでもブリッジサイズでもない事。
 第2に、非常に薄い事。
 第3に、これこそ最大の特徴であるが、「ある商品をリサイクルしたもの」である事。

 その昔、私はある人より「JR某社は従来、使用済みの定期券を、不正な流出防止や偽造防止のため全て焼却していたが、現在はその一部を利用して、表面の印刷や磁気膜を化学処理した上、特殊な印刷をほどこしてカードを作っている」と言う話を耳にした。

 「これはおもしろい・・・」と、早速入手を希望する旨を同社に申し出たが、「まだテストの段階であり、これがマニアの手に1つでも渡ると、“私にも・・・”“僕にも・・・”と波及する可能性があるため現段階では差し上げられない・・・」とケンもホロロに断られてしまった。
しかし、コレクションと言うものは「入手できない」となると、ますますほしくなるもの。「これを手に入れよう」と決めたら、少々の事では諦めない私である。
今度は時期を改め、直接その会社の社長に申し出て、私のコレクションに対する考え方や、TAMCの存在などを説明し、「入手経路、入手場所などは秘守する」とまで付け加えてお願いした処、「それほどまでおっしゃるならば・・・」と社長自身が個人的に持っておられたものを分けて頂く事が出来たのである。

 このカードはジョーカーも含め53枚で厚さは約1cm、これだけ薄いカードは私が持っている1400個以上のカードの中でも1~2個しかない。

 「たかがカード、されどカード」であって、当時は、まだ世の中に出ていないものであっただけに希少性もあった。
“コレクター魂”を示す一例として、敢えてここに紹介させていただいた。

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 この30年ほどに亘って私が集めたカードの幾つかについて、入手ケースやエピソードを含めて、今後、紹介させていただきたいと思っている。

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