坂本圭史

~同じゲームの道具でも~
トランプと双六

 最近、あまり使われなくなったが日本古来のゲームに双六(スゴロク)がある。 「双六」と言う言葉自体、死語になっているかもしれない。
しかし、これに対し12世紀以前に中東アジアで生まれ(詳細不明)、ジプシーによってヨーロッパに持ち込まれたトランプは、長く人気を保っている。 日本に渡来したのは400年前、ポルトガル人によるものである。この和洋2つを組み合わせたゲームがある。
それが何と、今から90年ほど前の大正9年、少女雑誌「少女の友」に「トランプ双六」と言う名で付録としてついていた。

大正9年(1920年)発行「少女の友」付録「新案少女トランプ双六」
(画像をクリックすると拡大します)

 ジョーカーを含めた53枚のトランプが並んでいる。 4つのコーナーのジャックが出発点。サイコロを振って、その数だけ進む。 コーナーのジャックに止まると、中心にあるジョーカーに向かう事が出来る・・・と言った具合に進めて行く。 ゲーム“2 10 J(ツー テン ジャック)”にならって、2と10に止まった場合はジョーカーに向かう事が、特別に認められるルールになっている。 そして早くジョーカーに達した人が「上がり」、つまり「勝ち」と言う事になる。
今年は平成25年であるが大正で言うと101年、昭和88年である。 この双六で遊んだ少女は、いま100歳くらいになっているだろう?

 モノを大切にした時代であったためか、「廃物利用」と注記があって「双六に飽きたら、1枚ずつ切り取ってトランプとして使って下さい」と書いてある。 「廃物利用」と言う言葉も、いま死語になっている。

 トランプ自体、100円ショップで買える今の時代とはその取扱い方法も大きく変わって来た。  終戦直後、私が小学生の頃、今は亡き父(奇術研究家 坂本種芳)が 「大切にしているトランプを見せてあげよう」と言って、 先ず手洗いで手を洗ってから「しまっていたトランプ」を出して見せてくれた事が、強い印象で心に残っている。時代の変化を感じる「今日この頃」である。

 ≪ 前回                       次回