坂本圭史

変わるもの 変わらざるもの

~同じカードでも・・・~

第2回

 わたしが蒐集しているトランプで「橋」のある風景を抜き出してみた。
ニューヨークの「ブルックリン橋」<写真1A>、ドイツのハイデルベルクにある「カール・デオドール橋」<写真1B>、ロンドンの「タワー ブリッジ」<写真1C・D>、日本では「お江戸日本橋」<写真1E>などがあった。

写真1A ブルックリン橋       写真1B カール・デオドール橋       写真1C タワーブリッジ
写真1A ブルックリン橋       写真1B カール・デオドール橋       写真1C タワーブリッジ
写真1D タワーブリッジ          写真1E お江戸日本橋
写真1D タワーブリッジ                    写真1E お江戸日本橋

 話は変わるが、九州佐賀県諸富と福岡県大川の間に流れる筑後川に東洋一の昇開橋(旧JR佐賀線)が掛かっている。
船が通る時、橋桁が上がり、列車が通る時、橋桁が下がる・・・・と言うもので、亡父坂本種芳(TAMC創立者の1人で、のち会長に就任)が設計したものである。
その模型は、パリの万国博覧会にも出品された。
今は佐賀線の廃線により列車は通っていないが、橋梁そのものは国の登録文化財制度第1号の指定になり、夜はライトアップされ永久保存されている。
昨年は、何故かその昇開橋が、テレビ・新聞・雑誌などで幾度となく取り上げられ、全国的に紹介された<写真2>

写真2 日経新聞2008年12月8日夕刊
写真2 日経新聞2008年12月8日夕刊

 父の本業は国土交通省(当時 鉄道省)の技師であったが、他面、創作マジックの考案で、かなりの実績を残している。
日本で唯1人、アメリカのスフィンクス賞受賞者でもある<写真3A・B>

写真3A 「香炉とひも」を演ずる坂本種芳 (筆者の父)
写真3A 「香炉とひも」を演ずる坂本種芳 (筆者の父)
写真3B スフィンクス賞
写真3B スフィンクス賞

 事実、その昇開橋も、地盤軟弱な筑後川に長さ約503メートル、中央の鉄塔は約30メートルの高さがある。
橋の中央部分の長さ24m・重さ48トンもある橋桁を短時間に、負担も少なく、且つ安定的に上昇させるためにどうすれば良いか、正にイリュージョン“人体浮揚術”の仕掛けを髣髴とさせるマジック的な要素がかなり含まれていた。
その橋は、美しい周辺の風景と共に、沢山のテレフォンカードが発行されてきたが、テレカは、前回述べたように、既に寿命を終えたにも等しい<写真4A・B・C>

写真4A 筑後川昇開橋のテレフォンカード
写真4A 筑後川昇開橋のテレフォンカード
写真4B 筑後川昇開橋のテレフォンカード
写真4B 筑後川昇開橋のテレフォンカード

写真4C 筑後川昇開橋のテレフォンカード
写真4C 筑後川昇開橋のテレフォンカード

 その風景が、トランプのデザインとして残されていないのは、マジックをこの上もなく愛していた父だけに残念である。

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