土屋理義

マジックの切手
第24回

トニー・カーチスのフーディーニ


 アメリカの人気映画スターであったトニー・カーチス(1925-2010)の追悼記念として発売された、モザンビーク発売の8枚連刷の切手(2010年)です。出演した代表的な8作品の一場面が、彼の10代から80代までの顔と共に描かれています。左側の4枚は上から「フーディーニ」(1953)、「手錠のままの脱走」(1958)、「グレート・レース」(1965)、「お熱いのがお好き」(1959)。右側が上から「アリババの復讐」(1952)、「フォルウォスの黒楯」(1954)、「求婚専科」(1964)、「成功の甘き香り」(1957)の8枚です。


8枚連刷切手



切手「フーディーニ」の拡大


 この中の左上の切手が、マジックの切手-「フーディーニ(邦題・魔術の恋)」です。”THE GREAT HOUDINI”のポスターを背景に、フーディーニと妻でアシスタントのベスが、ジャンボ・ライジングカードのマジックを演じているところが描かれています。




映画「魔術の恋」の日本語パンフレットと解説


 フーディーニが将来の妻ベス(ジャネット・リー)と知り合い、苦労を重ねながらも、やがて「世紀の脱出王」となり、世を去るまでの人生を映画化したもので、映画製作当時、トニー・カーチスとジャネット・リーは実生活でも夫婦でした。


実際のフーディーニ・ベス夫妻


 映画の中に出てくる30近くのマジックは、米国の有名なプロマジシャンのダニンジャーの指導によるものです。口に別々に呑みこんだ針と糸を、つなげた状態で取り出したり、ベスに向けてリボンの弾丸を詰め込んだ銃を撃つと、リボンが胴体を貫通する小奇術などの他に、脱出もののマジックを数多く見せています。回転する大きな丸のこに引かれる直前の脱出、ビルの上から吊るされたストレート・ジャケットやロンドンの監獄からの脱出、箱の中に手錠をかけられて、氷の張った冷たい川に落とされ抜け出す離れ業などです。

 そして映画は、フーディーニが「パゴダの水牢」と銘打った、逆さ吊りの水槽からの脱出に失敗し、生気を失っていくシーンで終わります。しかし事実は、不死身のフーディーニを確かめようとした学生に、楽屋で不意に腹部を数回強く殴られ、それが原因で虫垂炎から腹膜炎を併発し、1926年10月31日のハロウィーンの日に、52歳の波乱に満ちた生涯を閉じたのでした。
(注)現在「魔術の恋」のDVDを、ネット上で廉価に購入することが出来ます。

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