土屋理義

マジックグッズ・コレクション
第7回

天華の公演プログラム

 二代目天華(てんか)一座が、来日した有名な米人マジシャンのカーター・ザ・グレートを真似て、虎を用いた大掛かりな「魔術楽劇 猛虎と美人」を演じて評判をとったのは、大正11年(1922)のことです。これは美女が猛虎の檻に入れられると、一瞬にして術者の萩原秀長と入れ替わるというパントマイムの魔術でした。

「天華大魔法団」のプログラム(表、裏)、表紙の写真は二代目天華
「天華大魔法団」のプログラム(表、裏)、表紙の写真は二代目天華


日時、劇場名は不明だが大正11年頃か?
日時、劇場名は不明だが大正11年頃か?

 昭和4年(1929)9月には京都・夷谷(えびす)座、昭和5年12月には新宿の新歌舞伎座で、首切り大魔術(演者・萩原秀長)、最高圧電流実験(人体空中回転)、大魔術-酒場の女王(箱からの大人数の出現)のイリュージョンを、赤田龍子らの歌やダンスとともに上演しています。

昭和5年12月・新歌舞伎座での「松旭斎天華大公演」プログラムの表紙、写真は二代目天華
昭和5年12月・新歌舞伎座での「松旭斎天華大公演」
プログラムの表紙、写真は二代目天華

左の顔写真は歌手の赤田龍子
左の顔写真は歌手の赤田龍子

一座楽団(左上)、「首切り大魔術」を演じる萩原秀長(左下)、「最新奇術」を演じる二代目天華(右)
一座楽団(左上)、「首切り大魔術」を演じる萩原秀長(左下)、「最新奇術」を演じる二代目天華(右)

 特に最高圧電流実験(写真)は助手の赤田龍子を鉄骨の上に立たせ、下腹部に鉄の棒を突き刺して(実際には鉄棒付きの支えを下から股にはめ込む)龍子の体を空中で回転させるエロチックなもので、横に術者としての萩原秀長の姿が写っています。左端の技師がスイッチを入れると火花や電流が流れるのが見えるのです。これは当時、昭和初期のエロ・グロ・ナンセンス文化の世相を表わすものとも言われました。

エロ・グロ・ナンセンスの世相を映した「最高圧電流実験」
「エロ・グロ・ナンセンス」の世相を映した「最高圧電流実験」

 昭和4年9月29日付の「京都日出(ひので)新聞」の記事に「天華一行の”三十万ボルト特別最高圧高周波電流人体通電科学実験”は学界の問題になり素破らしい高評を博してゐる」と書かれています。

 その後、台湾での興行中、一座の歌手であった赤田龍子が三代目天華になっています。
 なお萩原秀長は、職業奇術師の集まりである日本奇術協会の設立時(昭和16年1月に同会会則、役員名簿作成)に、初代会長・松旭斎天洋(名誉会長は初代天勝)の下で副会長をつとめ、当時の奇術界において重鎮の一人でした。

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