ボナ植木

◎思いやり理論4
~疑惑を生じさせるのは失礼だ~

「何か不自然だな」とか「違和感がある」と思わせては失礼だと思います。
つまり演出と関係ないところでお客様の心理が動く、というのは実は心地良くはありません。

ステージにおけるタネの「フラッシュ」がそうです。
上着の裾からシルクが丸まっているのが見えるのは、実に気になります。
観客の気が散ってしまいます。

そういう考えから派生してちょっとやりすぎかなとも思いますが、私はチャイナリングの演技には「切れ目」が暗に存在しているという演技にしています。
チャイナリングを見ているお客様は「切れ目がないと入らないよな」と心の中では潜在的に思っているに違いないのです。

そこで私はお客様にシングル1本を持たせ、自分はキーを持ち、打ちつけて入れるとき「あれ? すいません、一度手を離してください」といってシングルを受け取りじっとみつめ、少し動かして「ここを持ってください」といいます。
観客は必ず笑います。ある意味、邪道かもしれませんが私の演技スタイルには合致しているのでよくやります。

あとカードの取らせ方で、二人の観客に取らせるならば同じ方法にしましょう。
マジックの都合で取らせ方が変わるのは不自然です。

以前、とあるマジシャンがテーブルマジックで右の人にはファンにして1枚とらせ、左の人にはドリブルでストップさせていました。
実に不自然ですし「あれ? 何で違う取らせ方をしたんだろう」と思う人もいるかもしれません。
マジシャンの都合で観客に「不自然さ」を感じさせてはいけません。

私はよく次のように取らせます。

「ではひとさし指をだしてください」といいながら左手にデックを持ちトップから1枚ずつ右手に順番を変えずにとっていきます。その都度、左手デックを前に差し出します。
「好きなところでカードをタッチしてください。スマホみたいに」と言います。

写真1

「スマホみたいに」ということで、無理に下のカードをとったり引っ張ったりすることがなくなります。
これはフォーシングデックカードを使う時でも、普通に取らせるときでも同じ動きをします。

ただ後ろの人に選んでもらうならストップをして選んでもらうことは不自然ではありません。
フォースならヒンズーシャッフルフォースが使えますね。
「では一番うしろのお客様、そこに座っていて結構ですので、好きな時にストップしてください」
これはまったく自然であり、不自然な取らせ方ではありません。
後ろのそのお客様は前に出てくる必要がなくて、なおかつカードを選んだことになります。
私は「シカゴオープナー」の演技のフォースの時に使っています。

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