氣賀康夫

フォーシングまたはフォース
Forcing or Force


    <解説>
    フォーシングまたはフォースというのは、一組のカードの中から一枚を観客に自由に選ばせたように見せて、 実は演者の予定した特定のカードを選ばせてしまうという誠に便利な技法を指します。
    フォーシングにはいろいろな方法が開発されており、おおむね次のように分類することができます。

    (1) 技巧的フォース(例: クラシックフォース、リフルフォース)
    (2) 数理的フォース(例: 数字フォース、ターンオーバーフォース)
    (3) 心理的フォース(例: カットフォース、ヒンズーシャフルフォース)
    (4) 仕掛けフォース(例: スベンガリデック、ラフアンドスムーズデック)

    数あるフォーシングのなかで一番怪しくない自然なフォーシングはクラシックフォースですが、 この技法はどんなに熟達しても観客が他のカードを選んでしまう確率をゼロにすることができません。
    そこで、筆者は見たところできるだけクラシックフォースに近く、 自然な動作でフォースができる手法を永年研究してきました。
    そこで、この講座ではいままで公開したことのないそのような技法を紹介することといたします。

    一つお断りしておきたいのですが、奇術というものは一度種を知ると、 二度とその種を知らない状態に戻ることはできないものなのです。
    したがって、ある新しいフォースを使った奇術を見て不思議であると感じて楽しく鑑賞ができた人が、 そのフォースの方法を勉強したとたんに次からはそれが知っている奇術になってしまうという宿命になります。

    そうなると、演技者はこういう人のためにさらに新しいフォースを開発しなければならないと考えるべきなのでしょうか。
    そうならば、極端には、フォースを使う演技ごとに新しいフォースが必要になり、 いわゆる際限のない追っかけっこの状態に陥ります。
    それはとても奇術の研究として正道とは思われません。

    そのように考えると、奇術というものはたとえ知っている種を使おうとも、演技者はそれを後ろめたく考える必要はなく、それが知られていない種であるという仮定のもとで堂々と演技していいと考えるべきだと気づきます。
    観ている方も、種を知らない前提で演技を鑑賞するのが正しいのです。

    このように割り切ることができないと、正しい奇術の演技も鑑賞もできないということになります。
    そのような観点に立ち、筆者も将来、無数のフォーシングの開発には力を入れるつもりはありません。




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