古川令

ミリオンカードに使用するカード

 まず最初にミリオンカードで使用するカードについて書いてみます。

<カードのバック>

ミリオンカードの裏の模様
ミリオンカードの裏の模様

 指を完全に閉じてバックパームする場合には、バックの柄は気にしなくても良く、ファンカードを使われる方もいます。しかし私は、バックパームの指は力を抜いて自然に開いた状態が望ましいと考えているので、必然的にカードのバックはカジノなどでも使われるような白い縁の無いカードとなります。USプレイングカードの製品では、BeeやSteamboatなどの赤バックです。

 余談ですが、私の場合手が小さい事もあり、学生時代には、特にフロントパームでの漏れを避けるためにトップカードのバックとデックの側面を黒マジックで塗るという裏技を考えました。しかし、黒く塗るのが面倒なだけでなく、出現させたカードの裏が見せられないなどの弊害もあってすぐに止めました。

 カードのフェイスですが、私はフォーインデックスが望ましいと思います。これは通常のカードの場合には、左手で押し出しファンをした場合にインデックスが見えずに、カードが白くなってしまうからです。

<カードのサイズ>

 ご存じのように、カードにはポーカーサイズとブリッジサイズがあります。一般的に言えば、幅の狭いブリッジサイズの方がパームには有利ですが、私はあくまでポーカーサイズにこだわります。その理由はファンプロダクションにあります。

ブリッジサイズ6枚(左)とポーカーサイズ5枚(右)ファンが同じ大きさ
ブリッジサイズ6枚(左)とポーカーサイズ5枚(右)ファンが同じ大きさ

 ブリッジサイズでファンにするには最低6枚必要(最低4枚を捨てる事になる)ですが、ポーカーサイズの場合には5枚(最低3枚捨てればよい)で済みます。ファンプロダクションの場合、1回でも多くファンを出したいという考えで、この1枚の差が私には重要です。この点については、ファンプロダクションの解説のところで詳しく書きたいと思います。

<カードの厚さ>

ミリオンカードのバックパーム
ミリオンカードのバックパーム

 ミリオンカード用に薄いカードが市販されており、2つの点でお勧めです。まず、同じ厚さのパケットでより多くのカードを出現させる事ができますので、プロダクションの観点からカードは薄い方が断然有利です。また、多くのカードをバックパームするにはカードが柔らかである必要がありますが、薄いカードの場合は最初からカードが柔らかいので、カードを柔らかくする手間が省けます。

 ちなみにBeeやSteamboatなど、通常の厚さのカードを使う場合には、丸いペンなどを使ってカードを予め何度もしごいて柔らかくします。この際に注意すべき点は、ペンは常に長い辺に並行で、決して斜めに癖をつけない事です。

 なお、掲載されているバックパームの写真は、私が考える「悪い例」で、このようなパームは行いません。実際には、指の間が開いた状態のパームを行っています。指の間からカードが丸見えですが、実際には気にならないのです。

カードは3層構造です。
カードは3層構造です。

 トランプは透けないように3層構造になっており、3枚に剥がす事ができます(これを俗に「カードを3枚におろす」とも言います)。カードの芯の部分を除いて貼り合わせて、薄くて柔らかいカードを作るというマニアックな方法もありますが、その手間とカードの強度を考えるとお勧めはできません。ただ、この方法で芯のカードに模様を切り抜けば、クロースアップなどで使える「透かしのあるカード」を作る事ができますのでご紹介しました。

 私は現在、側面に♣MAGICIAN'S CARDと書かれたカードを使っています。薄さとフォーインデックス、縁なしバックという条件は満たしています。唯一の欠点は表面の加工に微妙なロット差があり、その滑りのバラツキをファンニングパウダーで十分には修正できない事です(ロウを使う場合には問題ありません)。個人的にはバイスクルそのままの滑りで薄いカードがあれば、無加工で使えてベストなのですが・・・

 次回はカードの滑りの加工方法について紹介します。

 ≪ ミリオンカードの魅力          カードの加工方法