平川一彦

私とエド・マーロー
第6回

<マーローのカードテクニック:1>

 前回で紹介したマーローのカードトリック“The Eidetic Slide”に使っている“マーローズ・ワンハンド・ターンオーバー”と、そして次の第7回では“マーローズ・ツーカード・スロウ”のテクニックを順次解説してみます。

 マーローは、このテクニックを世界中で最も自然であると、少しオーバーな表現をしていますが、もしかして、だから、ダブルターンオーバーと言うのでしょうか??それはともかく、まず、“マーローズ・ワンハンド・ダブルターンオーバー”ですが、これは客には自然に見えますが、やる方にとっては少し練習がいります。

  1. デックを左手に持ちます。当然、4本指は右サイドに、そして親指はトップに付けます。
    デックをこのように持った時、カードを左側の方へ斜角(ビベル)をつけます。
  2. 左手の中指でそのビベルしたサイドを下へ押しつけますが、左手親指の第一関節もまた、そのサイドを下へ押しつけます。
    こうすると、数枚のカードが、はっきりさせるために少し誇張された≪写真1≫のように、左手中指の下から1枚ずつ逃げるように放れていきます。実際は、デックとその放れたカードとの間はほんの少しです。しかもこの動作は、デックを上から握っているように見えている右手でカバーされています。
  3. 写真1
    写真1
  4. 2枚のカードが放れたら、左手中指をその分け目に入れてブレイクを作りますが、他の指は、そのブレイクをふさぐために、通常の位置のカードの上へ付けます。ブレイクは、ちょっとの間、中指で保持します。
    上記は、“ダブルターンオーバー”の準備をするためで、そこには、2枚のカードをブレイクしているというかすかな気配も感じられません。
  5. 次は、世界中で最も自然な押し出し(プッシュ・オフ)と言えるでしょう。
    すなわち、親指はカードの中央に横切って置き、薬指は、中指で保持しているブレイクに付けます。そして、中指と親指は、その2枚のカードを親指のボール部に対して、上方へ押し上げます。そうすると、その2枚のカードは≪写真2≫のように、他の指と親指の間に保持されます。
  6. 写真2
    写真2
  7. 親指でカード(2枚)の上を押し続けると、カードは他の指に押えつけられます。次に、親指と他の指を伸ばすと、トップカードを押し出しているように見えます。ここでそのカード(2枚)は指の上にそのままに残して、親指は2枚のカードの左サイドに戻します。
  8. 今度は、親指で単に2枚のカードを前方へ押します。すると、その2枚のカードは、正確なレジスターのように、フェイスアップにターンします。
  9. カードがデックの上にターンしたら、親指をじゃまにならない所に移動します。≪写真3≫≪写真4≫参照。
  10. 写真3
    写真3
    写真4
    写真4
  11. そのカードをフェイスダウンにターンするには、動作を単に繰り返します。
    動作は段階的に説明しましたが、実際のターンオーバーは、ほんのわずかの間で、その動作には、1枚のカードを単に押し出して、そしてそれをターンしているような錯覚を生み出すものが一緒に含まれています。
  12. 2枚のカードのワンハンドターンオーバーを、カードチェンジの現象に使った場合に、それは、より多くの人を納得させます。つまり、カード(2枚)をデックから持ち上げて取り、それをデックに戻してカードを押し出すというダブルリフトでなく、単に、ワンハンドでそのカードをターンして、それから、同じ動作でカードを押し出すということです。

 ここから、マーローは、このワンハンドターンオーバーをマスターするのが少し無理かもしれない人々のために、次のように両手で行う方法を説明しています。

  1. 準備は前回と同じです。カード(2枚)は≪写真2≫の位置になっています。
    今度は、ワンハンドで完成させる代りに、右手の親指と人さし指で2枚のカードの右下コーナーを握り≪写真5≫、それから、そのカードを左側へターンしてデックの上にフェイスアップにしますが、そのときに少しデックのインナーエンド側の方へターンしながら≪写真6≫のようにインジョッグします。
    左手親指は、その2枚のフェイスアップカードを押えて、その他の指は≪写真6≫のように、じゃまにならないようにします。
  2. 写真5
    写真5
    写真6
    写真6
  3. その2枚のカードをフェイスダウンにするには、よりによって最も簡単です。
    2枚のカードの右下コーナーを右手の親指と他の指で握り、その指を2枚のカードの右サイドに沿って単にその中央まで移動させます≪写真7≫
  4. 写真7
    写真7
  5. 次に、単にその2枚のカードを、デックのトップの表面を滑るようにターンさせて、フェイスダウンにします。

 この“デックのトップの表面を滑るようにターンさせる”とは、ビギナーの人は読んだだけでは、どうやるのか理解しにくいと思いますので、後でマーローの“ヒット・メソッド”というテクニックを解説したいと思いますのでそれを参照して下さい。このテクニックは、2枚のカードを本当に1枚のようにターンしているように見える素晴らしいテクニックです。これは、バーノンや他の多くのカーディシャンが用いています。

 最後にマーローは、次のように言っています。

 私は、生徒たちに、ダブルリフトとダブルターンオーバーにははっきりした違いがあることを指摘しなければなりません。

 つまり、ダブルリフトは、カード(2枚)をデックから持ち上げてデックから持ち去る行為であり、ターンオーバーは、そのカードをデックの上にひっくり返す行為です。ビクター・ファレリーも、この違いを長い間指摘していて、ターンオーバーは、ダブルリフトよりも人をより多くだませる、とはっきり述べています。

 両方の方法を行った経験では、私は彼と同意見です。私はダブルリフトを行うときは、いつでもダブルリフトの代わりにターンオーバーを使用していると、アドバイスしています。

― Off The Top by Ed Marlo P.7~8 ―

 以上で私の意見も含めて、マーローの“ワンハンド・ダブルターンオーバー”の解説を終わりますが、参考にしたこの本は、初版が1945年に出版されています。そして私が手に入れたのは、今から約40年前のことです。

 この本のマーローの説明は、後期になって出版されたものと比べると、詳細に解説されていませんが、私がこの本と出会った頃は、マジックを研究しはじめたばかりの頃で、読んだときは感動したものです。
60年以上も前に発表されたテクニックとはいえ、今でも世界中のマジシャンが、このマーローのテクニックから何らかの形で恩恵を得ていることを、忘れてはいけない気がします。

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