平川一彦

パンドワー
第10回
ゾーズ・ワイルド・ワイルド・エース(1)

次の二つのトリックは簡単に出来て、しかも観客には非常に不思議に見えます。

現象

 赤バックのスペードのエースがブランクカードに変わり、4枚のブランクカードがエースに変わります。

準備

・カードのフェイス(表面)にハートのエース、 クラブのエース、ダイヤのエースの片方のインデックスの部分だけが プリントされた青バックのブランクインデックスカード3枚。
・青バックのスペードのエース(レギュラー)カード1枚。
・青バックのブランクフェイスカード1枚。
・赤バックのブランクフェイスカード1枚<写真1>

写真1

 上記のカードで、青バックのスペードのエース(レギュラー)カードのバック(裏面)と、赤と青バックのブランクフェイスカードのフェイス(表面)にラフ加工をします。 以上のカードをトップからボトムへ青バックのブランクフェイス、ブランクインデックス(インデックスは右上コーナー向き)のハートのエース、クラブのエース、ダイヤのエース、赤バックのブランクフェイス、そして最後(ボトム)に青バックのスペードのエース(レギュラー)の順にセットします。 セットしたパケットのバックを外側に向けてコートの内ポケットまたはシャツの胸ポケットに入れておきます。

手順1

  1. パフォーマーは右手でポケットからパケットを取り出して、  フェイスダウンで左手のディーリングポジションに置きます。 エースのインデックスは右上コーナーに来ています。 右手の中指の先でトップカードの右上コーナーを少し持ち上げて、 右手の親指をその右上コーナーのフェイスに付けます。
  2.  スタッドディールの形でそのトップカードを完全にフェイスアップにすると、 右手の親指はブランクカードの右下コーナーのフェイスに来ています。つまり、 右手の親指と人さし指と中指の3本でブランクカードの右下コーナーを持っています。 左手の親指でそのカードの左上コーナーをスナップして1枚のブランクカードであることを強調します。 そのカードをフェイスアップでテーブルに置きます。
  3. 次に左手パケットのトップカードを左手の親指で右方向へ押し出し、 そのカードの右上コーナーを初めと同様に右手の親指と中指と人さし指で持ち、 スタッドディールの形でフェイスアップにします。すると右手の親指は、 そのカードのインデックス(ハートのエース)を完全にカバーします。 これはカードをフェイスアップにする時にブランクフェイス面が 最初にパフォーマー側に向くので容易に確認できます。
  4. 右手はこのカードを完全にフェイスアップにすると、そのインデックスを 右手の親指で隠しています。そのカードの左上コーナーを左手の親指でスナップします。 そして右手は、そのカードをテーブルに置いてあるブランクフェイスカードの下へ <写真2>のように滑り込ませます。 続けて右手はその2枚のカードをフェイスダウンにターンしてテーブルに置きます。 そのトップカードはハートのインデックスカードです。(インデックスは左下コーナーに来ています。)
  5. 写真2
  6. 次に3番目のカードを同様にスタッドディールの形でブランクフェイスを見せて、左手の親指でスナップして右手をテーブルカードの方へ動かして、持っているカードをテーブルカードの2枚のトップにフェイスダウンに置きます。 4番目の青バックのカードも同様に繰り返します。テーブルにはフェイスダウンの4枚の青バックのパケットがあります。
  7. 左手には一見すると1枚の赤バックのカードが残っていますが、実際は2枚のカードがラフ加工でぴったりとくっ付いています。右手でそのカードを同様にスタッドディールの形でフェイスアップにして、スペードのエースを見せます。 続けて右手はそのカードをフェイスアップのままテーブルパケットの右側に持って行き、右手のカードの左サイドをテーブルの表面に付けながらパケットのトップにフェイスダウンにターンします。
  8. 右手はテーブルパケットを取り、左手のディーリングポジションにフェイスダウンで置きます。この時の順番は、トップから赤バックのブランクフェイス、青バックのスペードのエース(レギュラー)、ブランクインデックスカードのダイヤのエース、クラブのエース、ハートのエース(インデックスは全て左下コーナーに来ています。)そして最後に青バックのブランクフェイスカードになっています。
  9. 右手は左手パケットのトップの赤バックのカード(これはスペードのエースと思われているが、実際はブランクフェイスカード)を取り、フェイスダウンでテーブルに置きます。続けて右手は左手の青バックのトップカード(スペードのエース)を取り、そのカードが吸収性の性質があることを言いながら、そのカードでフェイスダウンのままテーブルに置いてある赤バックのカードのトップにタッチします。(又は撫ぜます。)そしてそのカード(スペードのエース)を左手パケットのボトムへ戻します。
  10. 直ぐに右手は左手のパケットの両エンドを上から握り、左手の親指と他の4本指の間を上下させるパケットの両サイドを揃える動作で何気なくパケットの上下を逆にして左手に置きます。すると全てのインデックスが右上コーナーに来ます。私(訳者)は、このパケットの上下を逆にする技法を“オールサイドスクエアー”と言うテクニックを使っています。
  11. 次に右手の親指を左手パケットのインナーエンド側から下(フェイス)側に入れて右手の他の指をトップに付けて握ります。そして右手はパケットを左手から持ち上げて、右手首から先をターンしながらパケットを片手ファンでフェイスアップにして4枚の青バックのエースを示します。(ファンはあまり広げすぎないように注意します。スペードのエースのバックに青バックのブランクフェイスカードがラフ加工のためにくっ付いています。)
  12. 右手はファンにしたカードの外側の縁でテーブルの赤バックカードをひっくり返して<写真3>のようにブランクフェイスになったカードを示します。 ここでトリックを止めても構いませんが、次のように現象を逆に戻すことも出来ます。
  13. 写真3
  14. 今、パフォーマーは右手にフェイスアップで4枚(?)のエースをファンにして持っています。テーブルには1枚の赤バックのブランクフェイスカードが置いてあります。
    右手は4枚のファンを左手にフェイスアップのまま揃えます。そして右手でパケットのアウターエンドを握り、内側(パフォーマー側)にターンしてフェイスダウンにします。そうするとブランクエースのインデックスが左下コーナーに来ます。
  15. 次にボトムのスペードのエースをトップに移しますがボトム2枚はラフ加工でくっ付いているので、左手の小指でボトムカード(スペードのエース)の右下コーナーを下へ下げるプルダウンムーブでラフ加工から剥がして、右手でボトムカードを取り、フェイスダウンで左手に握っているカードのトップに移します。
  16. 右手はテーブルの赤バックのブランクカードを取り、左手パケットのトップにフェイスダウンで置きます。そして左手の親指をパケットのトップに強く押し付けます。ここで私(訳者)は右手で左手パケットの上でお呪いのジェスチャーをしています。
    右手は左手のパケットのインナーエンドを、親指をトップに、他の4本指をフェイスに付けてフェイスダウンのままファンにして5枚のカードを示します。それからファンを左手で持ち、右手をフリーにします。
  17. 右手はトップの赤バックのカード(実際はスペードのエースと赤バックのブランクカードがラフ加工のためにくっ付いて1枚のカードのようになっています。)の右上コーナーのトップに親指を付け、人さし指 と中指を同じコーナーのフェイスに付けてそのカードを取り、右手を内側に返してスペードのエースを見せます。赤バックのブランクフェイスカードが赤バックのスペードのエースに戻ったことを言います。
    右手はこの赤バックのスペードのエースのフェイスを外側(客側)に向けてコートの外側の胸ポケット又はシャツの胸ポケットに入れて右手は左手の4枚のカードを揃えます。
  18. 次に右手は左手パケットのインナーエンド側から、右手の親指をフェイスに、他の指をトップに付けて握り、パケットをファンにしてそれからフェイスアップにターンして<写真4>のように4枚のブランクフェイスカードを示します。
    そして右手はファンをフェイスアップのまま左手に揃えて、ブランクサイドを外側(客側)に向けてコート又はシャツの胸ポケットの先に入れたカードの前(客側)に入れます。ブランクインデックスは右上コーナーに来ています。これで次の現象を繰り返すセットになっています。
  19. 写真4

MAGIC, INC."THOSE WILD, WILD, ACES" by Edward Marlo, P.01~03



    パケット又はデックの両エンドと両サイドを揃えながら、その上下を逆にするテクニックは次のように行います。ここではパケットで解説します。

  1. パケットをフェイスダウンで左手のディーリングポジションに持っています。右手をパケットに右斜め上から近づけて、右手の親指をインナーエンドの中央より少し右側に付け、右手の中指をアウターエンドの中央より少し右側に付けてパケットを握ります。
  2. 右手の薬指、小指は中指に沿って並んでいます。右手の人さし指は指先を少し曲げて、爪の先をパケットのトップに軽く付けます。この握り方をエンドグリップと言います。 ここでよく間違うことは、右手でパケットを握る時に、真上から垂直に握ってしまうことです。右手はパケットに対して右斜め上から約30度の角度でパケットの両エンドを握るのが正しい、そして美しく見える持ち方です。
  3. 次に右手はパケットを左手の指先に持ち上げるのですが、まず、左手の人さし指でパケットのボトム(フェイス)を軽く撫でるように動かしながら、同時にパケットをエンドグリップで握っている右手でパケットの左サイドを少し持ち上げます。 すると、左手の親指が自然とパケットの左サイドに沿って中央に滑ってきます。しかしパケットの右サイドと左手の中指、薬指、小指は動かさないでおきます。いまパケットは、その左サイドの中央に左手の親指が、右サイドに左手の中指、薬指、小指が、ボトムのフェイスに左手の人さし指の爪先が付いて、それぞれの指先で保持し、しかも左手の平から浮いた状態になっています。
  4. そして今度はパケットの両エンドと両サイドを揃える動作ですが、まず、右手は、パケットのフェイスに当てた左手の人さし指(爪)を支点にして、パケットを右回り(時計回り)に動かすと同時に左手を左回り(反時計回り)に動かします。  右手の親指が真上に来た時(パケットが半回転した時)にパケットのインナーエンドが上向きになり、アウターエンドが下向きになります。そして左手の親指は右手で持っているパケットの下サイド(最初の右サイド)に、左手の中指、薬指、小指はパケットの上サイド(最初の左サイド)に自然に位置します。
  5. こうしてパケットが一瞬、垂直になったら、左手はパケットを右回り(時計回り)に動かし、右手を左回り(反時計回り)に動かしてパケットを元の状態に戻し、右手はパケットの両エンドを握ります。この時、パケットは左手の平からまだ浮いています。そしてパケットを左手の指先から左手の平のディーリングポジションに下げます。パケットの両エンドと両サイドを揃えながらその上下を逆にしたことになります。

 このパケット又はデックのオールサイドを揃える“オールサイドスクエアー”と言うテクニックは、上級のカードマジックを行う時に必要なので正確に覚えてください。

 ≪ 第9回               第11回