坂本圭史

コレクションについて想うこと

1.コレクションとは…

 TAMCで作った「奇術いろはカルタ」の中の秀逸は、「お」……「老いてますますたまる奇術材料(ガラクタ)」ではないか?コレクションは、集めている本人にとっては宝物であっても、ハタから見ると「ガラクタ」以外の何物でもない事が多い。

 私は子供の頃、鉄道切符を集めた事があった。今のような自販機で売られているペラペラの切符に較べると、厚みもあって重量感溢れるものだった。1等車、2等車、3等車、特急券、寝台券……等々全て色が違う。加えて今ほど旅が手軽ではなかった時代であり、まして子供である。当時の鉄道切符には、「希少価値」と「旅の思い出やユメ」を選んでくれる何かがあった。そんな処に起因してか、小学生の頃から、得意の科目は地理だった。

2.私のコレクション

 後年、「マジック」と「旅行」が趣味になるにつれて、コレクションも様々な因果関係を保ちながら色々と変化し、今では次の3つのものを集めている。

  1. プレイング カード(つまりトランプ)
  2. シンブル(指抜き…日本にはあまりないが海外では地域性豊かなものが豊富)
  3. ホテルのドアに掛かっている「起こさないで下さい」の下げ札

 カードのコレクションは、単に数だけを競うなら、専門店に行けば幾らでも手に入る。しかし「コレクション」と言うからには、集める為の手間や苦労に価値がある。

3.世界のカードを求めて

写真1

 私がカードを集めるのは、主に海外旅行の時であるが、国内でも、観光スポットや各種イベント等に行った時は、そこにオリジナルカードがないかどうか、必ず目を光らせている。海外ではリゾート地、観光スポット、美術館、博物館、劇場、ホテル、有名ブティック等には必ずと言って良いほどオリジナルカードが置かれている。カジノにカードはつき物だが「イカサマ防止」のため、一旦、封を切ったカードは二度と使えないよう、孔をあけたり、角を切り落としたりして、場外で1個100円ぐらいで売っている。丁度、ゴルフ場でロストボールを売っているようなものであるが、そうしたカードを手にしていると、「これがギャンブラーが操っていたカードか…」などの想いが湧き、ラスベガスでの夢が甦る。

 1994年、スコットランドに旅行した時、土屋理義さんの紹介で、世界一のトランプ屋「サマビルオブ エジンバラ」を訪ねた。民族衣装のスカートを身に着けたサマビル社長(国際カード協議会長)は快く出迎えてくれた。あとで教えてみたら、この時の旅行だけでカード92個、シンブル45個を買い求めてしまった。それほど魅力溢れる旅だった。

4.整理方法とその効果

 このようにして、これまでに、私が集めたカードは約1300個、シンブル300個を超えた。これだけの数になると、収納に中々苦労する。ただ、しまっておくだけでは能がない。

 コレクショングッズを価値付けるのが「整理方法」である。その方法も、人により多種多様であるが、私は「一覧性」という視力に添えて、その魅力を引き出したいと考えた。

 「シンブルの場合は、筒型ガラス製で円形同転盤5段の専用陳列ケースがあるので、それを幾つか買い求め、我が家の玄関に陳列してある。

 「カード」は、マップケースと言う地図や図面を折らずに収納する縦67cm×横90cm×高さ4.5cmの引き出し10段の仕器を買い求め、各引き出しに木製の桟を取り付け、見易くするために、各カードに傾斜を持たせて収納している。こんな工作も楽しいことである。

 「永らく小売業に携わった人の発送ですね」と友人から冷やかされた。
  収納は次の分類に基づいている。

写真2
  1. 国別、都市別
  2. 形状別
  3. 航空会社・鉄道
  4. 劇場・ホテル
  5. 美術館・博物館
  6. 名作絵画・映画
  7. スポーツ
  8. 有名ブティック
  9. イベント
  10. 城・宮殿
  11. 観光スポット
  12. コマーシャル関連
  13. 有名人
  14. アダルト系
  15. マジック用
  16. その他

 そして、「自分で買い求めたもの」「人から頂いたもの」など、全て入手経路と年月を小型ラベルに記入して、カードの側面に添付している。このようにして集めたカードを眺めていると、買った時の状況、頂いた時の経緯などが、1つ1つ甦ってくる。

 私がカードを集めている事を知っている人から「おみやげに…」とか「ちょっと目に付いたので…」と頂き、カードを通じて新しい人間関係が深まることも多い。

5.コレクションの結末は…?

 しかしながら、考えると、やはり冒頭に申し上げたように「これもガラクタなのだろうか?」と不安に駆られることも確かである。私が死ねば所詮「何も評価されないまま、捨てられてしまうのではないか…」と思っていた矢先、私より40歳も若いマジック仲間から「坂本さん!坂本さんが死んだら、このカードすべて私が引き受けますよ…!」と言ってきた。それを聞いた私の家内が「カードとシンブルだけは人に渡さないわよ!ほかのモノ(ガラクタ?)は別として…」と叫んだ。そこで私は、安心して引き続きカードを集め続ける事を決心した。

※TAMC誌に掲載した原稿をご紹介頂きました。

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