坂本圭史

趣味としてのマジック

5つのジャンル プラス1

 私どもは、「マジックが趣味だ」と言うと多くの場合「やって見せて!」と言われる。
しかし「サッカー」のサポーターが、みんなサッカーをやるだろうか?
「相撲」が好き・・と言う女性が、自分で相撲をとるだろうか?
それと同じで、「趣味がマジック・・・」と言っても、「演じる」と言う事だけではなく、「5つのジャンル」がある・・・と言うのが、私の持論である。 その5つとは・・・

  • 演じる
  • 見る
  • 創作する(オリジナルマジックを考える)
  • 探求する(超能力現象は本当にあるか?など)
  • コレクション(私の場合で言えばカード、シンブルなど)

 私がマジックを初めて演じたのは、小学校4年の学芸会の時と記憶しているので60有余年前の事である。
そんな昔の事は別として、趣味としてマジックの世界に入ったのは、東京アマチュアマジシャンズクラブ青年部に入会した昭和27年とすれば、それからも既に半世紀以上が経過している。

写真1
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 この様に、「趣味のマジック」と言っても、そのスタンスは様々あるが、必ずしも、 その5つのジャンルを、同時並行的に行なうとは限らない。 私は、現在約1500個のトランプを保有しているが、5つ目のジャンル”コレクション” に力を注ぐようになったのは、半世紀以上にわたる私のマジック人生のうち、 意外に最近の事である。

 1992年春、某大手流通業に勤めていた私は社内報の「達人 わが道を行く」と言う連載欄に 「不思議の達人:“奇術は人生を楽しいものにし、潤いと豊かさを与えてくれました”」と言うタイトルの記事の中で、 引き出し1段に入っているトランプの写真も掲載され、 その下に「旅先で集めたトランプの一部。一つ1つが思いで深いものだ」と書かれている<写真1>

 その年の秋、今でこそ有名になった経済誌“Forbes”の日本版がまだ創刊間もない頃、“男の週末ライフ”と言う欄に“いつの日も奇術が人生の潤滑油だった”と言う見出しで私の趣味に関する取材記事が掲載された。その時も僅か、引き出し1段のトランプの写真の脇に「世界各地のトランプや奇術関係の書籍の収集も楽しみの1つ・・・」と書いている。

 雑誌2誌にはそう書いたものの、それじゃトランプを本格的に集めようじゃないか・・・と思いついたのは、丁度その頃であったと記憶している。我がマジック人生の後半3分の1の期間に過ぎない。

 それ以来、エジンバラにある世界一のトランプショップ、“サマビル オブ エジンバラ“への訪問などが始まった。
ロンドンからの帰路には、飛行機に乗る時、携行荷物に対しオーバーウエイト料金を取られるほどのトランプを購入した。
<写真2>はその時購入した品の一部である。

写真2
写真2

 しかし、その5つのジャンルに、最近もう1つ加えた。その6つ目とは「マジックを通して人と交わる」と言う事だ。
確かに、マジックは1人でも楽しめる。男でも女性でも、大人でも子供でも、昼でも夜でも、器用でも不器用でも楽しめる。老化防止にも、ボランティアにも役立つ。
マジックをしていく上で、ノウハウ(Know How ⇒やり方・演じ方)は勿論大切であるが、今は“ノウハウ”以上に、“ノウフウ”(Know Who)、つまり「誰を知っているか?」、「誰と付き合いがあるか?」、「誰から情報をもらえるか?」、「誰から教えてもらえるか?」が大切な時代ではないかと思う。
これは、マジックに限った事ではない。

 人間関係は無形であるが、貴重な財産である・・・と言うのが私の持論である。
何故「マジシャンズクラブ」というものがあるか?マジックを通して、「大勢の人が交流を計る」、「大勢の人が相互にマジックを楽しむ気持を共有する」。
これがマジックの本当の楽しみ方ではないだろうかと思う。

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