土屋理義

創作落語手品

「創作落語手品」について

 TAMC(東京アマチュア・マジシャンズクラブ)の秋のマジック発表会で、オリジナルの新作落語手品を5回にわたり披露してきました。ホールの観客は500~600名、落語手品を見せるには広すぎる舞台ですが、観客のみなさまから独創的で面白い、落語と手品のミックスは珍しいなど、幸い好評を得て、楽しみにしてこられる方も大勢おられるのは嬉しいことです。

 そもそも落語は兄から教わりました。13才上の兄が、東大落語研究会の創立メンバーの一人で、兄が夏休みなどに札幌の自宅に帰ってくると、家族の前で覚えた落語をやってくれるのです。「恋せ家乙女」という芸名で、学生時代は三笑亭夢楽師匠、社会人になってからは三遊亭小圓朝師匠に指導を仰ぎました。70才を越えるまでOB会の寄席の高座に上がっていました。私も小学校高学年から中学生時代に、兄のまねをして学校の学芸会や校内放送で、よく落語をやったものです。

 手品は子供の頃から父に教わりました。父は一高・東大生時代に、「魔術の女王」といわれた初代天勝に可愛がられ、舞台の楽屋や浅草福井町の自宅に自由に出入りを許された天勝の大ファンでした。父からコインの移動やカードマニュピレーション、カード投げなどの手ほどきを受けました。

 面白いしゃべりを入れながら、座って手品をするのは動きが制限され、難しいところがあります。落語手品は全くの私の自作。まずテーマを考え、持っている手品道具で、そのテーマに使えそうな物をピックアップする(目の前に道具を並べてみる)。そしてストーリーを「あーだ、こーだ」と思案するのが楽しいひと時なのです。そしてマクラ(出だしのくすぐり・・・小話)と、最後のサゲ(落ち)を決めるという作り方。仕上げは女房に見てもらって手厳しい批評の嵐を浴びながら改良を重ね、完成するまで1~2カ月はかかります。

 演者の両脇に「八っつあん」と「熊さん」の衝立て(ついたて)を置いたことで、ネタ場が大きく広がり、数多くの道具を使えるようになりました。過去に森田銈治郎さん(TAMC12代会長)が落語手品を演じられましたが、ネタ取りを着物のふところ、たもと、帯、座布団、扇子、茶碗などから行ったため、大きな手品道具は使えませんでしたので、私の落語手品とは趣が大きく異なります。

 河合勝氏の大著「日本奇術演目大事典」に収録された「幕末以降の創作日本手品」39種の中に、私のオリジナル「落語手品」が、演目の一つとして写真と共に掲載されています。


「グルメ合戦」の一場面

 それではTAM亭C調の創作落語手品の「はじまり、はじまり・・・」

                                  第1回