平川一彦

私とエド・マーロー
第10回

<ランディ・ウェイクマンとマーロー>

 連載第2回で、マーローのお弟子さん達の中に、ランディ・ウェイクマンという人が居ることを紹介しましたが、その彼が編集と出版に携わった“リンキング・リング”という素晴らしい本の中で、マーローについて次のように述べています。

 マジック界のエド・マーローを紹介する必要はないと思います。なぜなら、デックを持っている全ての人は、彼を良く知っているし、また、彼の素晴らしい演技や彼の本やトリックなども知っているからです。

 その彼の本の中でも、“カーディシャン”は、ベストセラーになった事もあるし、今もなお、最高に売れ続けている、実に偉大な、素晴らしい本です。私は、マーローの最近のカードトリックを除いて、彼の市場に出ている彼の全てを見ているし、持ってもいます。しかし、私は、彼のデスクの一番上の引き出しに入っている資料が何であるかは、未だに分かりません。

 私は、米国ケンタッキー州北西部都市ルーイビルでのIBM国際コンベンションで初めてマーローの演技を見ました。

 エド・マーローは、彼が本に書いたものを充分に演じてくれました。彼の演技は、全く気取らないし、そして、大げさな派手さもありませんでした。これが、まさに、マジシャンです。

 と、このランディ・ウェイクマンも、私が連載第8回で解説したテクニックの“ヒット・メソッド”が載っている“カーディシャン”を絶賛しています。マジックに携わっている人、特にカードマジックに精通している人は必ず持っているという本です。

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 この本は、1953年に出版されたもので、私が手に入れたのは、それから14~15年後ですから、今から約42~43年前になります。もう、色も褪せて、だいぶ傷んでいますが、今でも見返すほど価値ある1冊です。

 また、ランディ・ウェイクマンも言っているように、マーローの演技は、大げさな動き、派手さは、バーノンやスライディニーなどに比べると、ほとんどありませんし、彼の本やDVDを見ても見当たりません。ですから、流れるような動きのステージショーが好きな人は、彼の演技そのものは、つまらないでしょう。ランディは、続けて次のように言っています。

 ここに示された、カードをマスターするためのこの素晴らしい資料は、我々にとって多くの喜びです。マーローの作品は、以前は“パレード”という本に見られましたが、以下は、彼の作品が小冊子に表現され、しかも、数ドルで売られた非常にすぐれているカードテクニックのオンパレードです。

<マーローのカードテクニック:4>

 ランディ・ウェイクマンの上の言葉が載っている“リンキング・リング”の最初の1ページの、オンパレードしているカードテクニック、1から5まである中の3、4、5の、特に3は、前に私が言ったマーローの再・再…改良作品です。

 すなわち、前回に解説した“マーロー・イン・スペード”に出てきた“ツー・カード・スロウ”の改良作品になると思います。

 で、タイトルは、“マーロー・オン・ザ・ダブル・フリップ・オーバー”

 これはトップカードをテーブルへフェイスアップにひっくり返すように見える方法です。実際は、2枚のカードが1枚のようにフェイスアップになっています。

 オリジナルのワンハンドの方法は、最初は“ツーカード・スロウ”というタイトルで“マーロー・イン・スペード”という本に発表されました。ここのは、それと同じ結果になる両手を使った方法です。その次に、このテクニックを使ったコリンズ・エースというパケットトリックを説明しています。

  1. デックを左手に持ちますが、左手人さし指をトップエンドに曲げて付け、そして、左手中指、薬指、そして小指をデックの右サイドに付けて、左手親指はデックの中央に横切って付けて置く、ディーリングポジションで握ります。
  2. 右手人さし指は、ダブルリフトの準備として、右下コーナーで2枚のカードをこっそりと持ち上げます。
  3. 次に右手人さし指は、2枚のカードの下(サイド)に沿って、その中央付近まで滑らせていきます。ちょうどその地点で、右手親指をトップにつけて、右手の指はそのカード(2枚)を≪写真1≫のように少し上方へ曲げます。左手親指は、デックのトップを下へ押え付けて、この動作を手伝っています。(つまり、このカード(2枚)にクリンプをつけることです。)
  4. 写真1
    写真1
  5. すぐに右手は、この2枚のカードをデックから取り上げて、≪写真2・写真3≫のようにテーブルへフェイスアップにひっくり返します。
  6. 写真2
    写真2
    写真3
    写真3
  7. もし、その2枚のカードを正しくひっくり返したならば、テーブルへ平らに接触して、完全に揃っているでしょう。
  8. その、ひっくり返している最中は、デックをテーブル近くで持っています。これは、カードを移動させる距離(間隔)が短くなり、カードがずれないことを保証します。

 最初の試みは、むだかもしれませんが、その“感触”(タッチ)は、すぐにつかめるでしょう。テーブルクロスでカバーされているテーブルの表面は、カードが接触する時に、あまり不快な音を出さないので確かに好都合です。

 この“ダブルカード・フリップオーバー”の方法は、“コリンズ・エース”の中に見られます。実際に、カードが少しずれてしまう万一の場合に備えて、“ダブル・フリップ”のカバーとして、追加のカード(アディショナル・カード)をここに使用するともっとわかりやすいでしょう。

― Marlo In The Linking Ring P.5~6 ―

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 マーローも覚えたての時は、カードがずれたりして、自分は下手だと言っていますが、何回か練習しているうちに、この“タッチ”が分かってきて、うまくできるようになったとの事です。私も、始めのうちはカードがずれたりしていましたが、マーローの言ったように、練習しているうちに、上手く出来るようになりました。また、確かに、テーブルクロスがかかっているテーブルの方がカードはずれません。

 ここに付け加えておきたい事があります。それは、このダブル・フリップ・オーバーと同じ結果になるテクニックを、ものすごく上手に、また、完璧に、しかも流れるように行うことができる、ある男性と女性のマジシャンについてです。これは、私が今まで見た中ではピカ一で、見事という他ありません。

 まず、片手に示した1枚のカードで、その手が動き出したかと思うと、そのカードが違うカードに変化して、それを両手で示して、片手でそのカードをテーブルのデックの上にポンとトスします。問題は、ここです。そのデックの上にトスしたカードがずれないのです。

 続いて、女性も全く同じようにやって見せたのです。彼らは、自慢する訳でもなく、とても素直な心が私に通じました。これが、まさにマジシャンだと思います。

 また、彼らは日本のマジック界の将来の事も、きちんと考えている素晴らしいマジシャンです。このような人もいるということは、日本のマジック界も捨てたものではありません。

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