氣賀康夫

氣賀カードマジックスクールを始めるにあたり

2017年 1月 吉日 
氣賀康夫 

東京マジックのマジックラビリンスはユニークな奇術関連情報を提供するサイトとして好評です。 「マジックラビリンスが営利目的ではなく、良い奇術情報をマジック愛好家に無償で提供しよう」という 趣旨に賛同して、新企画に筆者のオリジナルカード奇術研究の成果を動画で紹介することにしました。
さて、カード奇術は近代に西洋で急速に発達した分野です。特に二十世紀の研究成果には目を見張るものがあります。 「カード奇術は幾つあるのか」ということがしばしば話題になり、「数え方によるが数万はあるだろう」とも言われたりします。また、ときどき「私はカード奇術を何百種類知っている」などと自慢する人がありますが、私は知っている奇術の数が多いことが大切だとは考えておりません。私はカード奇術を数えようとしたことがありませんし、自分が知っているカード奇術を勘定しようといたこともありません。

実は昭和の時代にカード奇術が日本で本格的に奇術愛好家に普及するようになった源になる本が二冊あります。
・柴田直光著「奇術種あかし」
・高木重朗著「トランプの不思議」

この二冊の出版以来、日本のカード奇術研究が急速に進み、欧米のレベルに追いつくようになりました。一方、世界のカード奇術界では、その王道となる技法、プロットが古典として確立してまいりました。
今回の企画は、筆者の創作欲を満たすためのオリジナル作品集をもくろむものではありません。 筆者の目的は「オーソソックスなカード奇術を追求しよう」という趣旨にあります。
カード奇術を研究すると、「人と同じことをやっても面白くない。 自分独特のオリジナル作品を演じたい」という人がありますが、それは研究方針が道を外れています。

奇術の新しい開発というものは、過去に作られた方法を何らかの意味で改良するものでなければ研究する意味がありません。 本スクールで取りあげる技法や奇術の手順はすべて、自然な動作で、「魔法のような不思議な現象」を演出しようという趣旨のものです。 いままでに知られた方法と異なるものを提供するのは、筆者が既存の方法に何らかの不満な点がある場合にその不満な点を改良した場合だけです。 単なる気まぐれや功名心で改作をすることを筆者はよしとしません。このような趣旨で企画する本シリーズが奇術研究家のお役にたつことを期待いたします。

ありがたいことに動画の映像には本では得られない情報が盛り込めます。 しかし、逆に文字の方が詳細な情報がより正確に伝えられるということもありえます。 映像の情報提供が意味あるものになるように最大限の努力をいたします。
本企画がカード奇術愛好者にとって価値ある情報になることを期待しております。

<奇術編>              <技法編>