氣賀康夫

不思議なトランプの写真

<解説> このパズルは最近の筆者の自慢作です。他のパズルは主にパズルの目的でデザインされたものであり、それを奇術的に見せる(演出する)ことができるというものだったのですが、この「不思議なトランプの写真」というアイディアは、最初から奇術の材料として作ろうと企画したものなのです。トランプのデザインを用いて、面積消滅パズルでカードのサイズの穴をあけようという案は古くからあります。ところが今回のデザインでは、消えるカードが本当に表から見えなくなるように工夫されていること、並べ替えで切片の位置が変わっても、合わせ目や縁に不自然なものが現れたりしないこと、そのことがカードの表についてもカードの裏についても成り立っているところに特徴があります。このような条件を満たしたデザインは初めてではないかと思います。

<用具> カード奇術に使うのに、まずバイシクルの青のライダーバック、ポーカーサイズのカード一組が必要です。というのは、パズルがそのデザインで作られているからです。それから、肝心の使うパズルのカードですが、それは1枚の大きな長方形の写真を斜めに四つに裁断したものです。その表はカードを床にバラバラにカードを表向きにばらまいておいてそれを上から撮影した写真です。そして、その裏は同様に裏向きにばらまいたカードの写真となっています。その表のデザインが写真1、裏の写真が写真2です。この4枚の切片の正しい揃え方は二種類あり、裏も表もどちらでもごく自然な仕上がりになります。ただし、一方は普通の長方形の写真になりますが、もう一方の揃え方をすると中央に丁度カード1枚の大きさの穴があきます。そして、奇術の中で選らばれるべきカードとしては、クラブの7が使われます。このため、その穴のサイズのクラブの7が1枚余計に必要になります。

写真1
写真1

写真2
写真2

<演出>
1. 以下の演出では、一組のカードから観客が選ぶカードが「クラブの7」に特定される必要があります。このような場合に使われる奇術の技法を「Forcing」と呼びます。ここでは、筆者が開発した技術を要さないForcingの方法をご伝授しましょう。そのためには裏表が裏模様のカードを1枚必要とします。それは適当な2枚のカードの表を糊で貼り付けたもので十分です。準備としては一組の2枚目にクラブの7を表向きに位置させ、その上の一番上のカードをこの両面裏のカードにしておくだけで結構です。このカードをカードケースに入れておくのです。

2. 4枚の切片のなかで大きい切片(2枚あります。)の一つの裏側に、写真のクラブの7(穴の大きさ)を裏向きにしてマジシャンズワックスでくっつけておきます。これが大切な準備です。もしも、マジシャンズワックスが入手できないときは、両面セロテーブをごく小さく切って使ってもいいでしょう。この1枚は、写真の裏模様と溶け込んでしまいますから一見それがあることはわからないと思います。

3. 準備としては、4枚の切片は1枚の封筒に入れておくのがいいと思います。そして、それを取り出してテーブルの置いたときには2枚が表側、残りの2枚が裏側になるのがいいと思います。そして、秘密のクラブの7がくっついている切片は表向きになる方が安全です。4枚を封筒から取り出したとき自然にそのような組み合わせになるように準備するのが賢いと思います。

4. まず、テーブルの観客の前に4枚の切片を無造作に置き、話を始めます。「私には幼稚園の孫がおりますが、最近、鋏を使うのが上手になり、紙を切っては楽しんでいます。色紙とか新聞紙などをよく切って遊んでいます。先日、『じいじ、こんなに上手に切れたよ!』と自慢しに来たので誉めてやろうと思ってよく見ると、私がマジックで使おうと思って撮影し引き伸ばしておいた大切な写真を切り刻んでしまったのでした。私は思わず、『キャッ!』と叫んでしまいました。実はこれがその切り刻まれた写真です。ご覧ください。写真にはトランプが沢山写っていますが、裏はトランプの裏の写真です。」

5. 「ところで、この写真はどういう奇術に使う予定だったかをご説明いたしましょう。」 と言います。 カードケースからカードを取りだして、一旦表向きに持ち、その上の方(表の方)を少し切り混ぜます。 このとき一番裏のカードがちらつかないように注意してください。次にカードをよく揃えて裏向きにして、 それを左手に持ちます。そして、右手の拇指と中指を伸ばしてカードを持ちあげる形を作り 「では、右手をこのようにして、この一組のカードの上から適当な量のカードを持ちあげて、ここに置いてください。」 とお願いします。 このとき「ここに…」と言う瞬間に右手の掌を上に向けて左手のカードの右側に位置させます。すると、観客が術者の左手のカードから適当な量を持ちあげて、右手の掌に置きますから、その手を直ちに左手のカードの上に返えして受け取った右手のカードが表向きに左手のカードの上に乗るようにします。そこで、直ちにカード全体を揃えて右手に取り、テーブルの上に帯状にサッと広げます。そうしたら、上の方の表向きのカードを指で繰って行き、最初に出てくる裏向きのカードを押し出して、「では、ここの分かれ目のカードをお取りください。」と言います。この手順を踏むと、観客が選んだカードは必ずクラブの7になります。このテクニックをForcingと呼びます。

6. 次にテーブルの上の写真の切れはしを裏の面で、一つの写真に並べるのですが、並べ方としては、「右上隅がH6、左上隅がD3、右下隅がC3、左下隅がC4」という配置にすることが肝心です。こうすると1枚の長方形の写真が実現します。(写真3)

写真3
写真3

7. ここで、「この中にお客様が選らばれたカードが見えていると思いますか?」と質問します。見えるのが裏模様ですから、当然、観客は「わからない。」と応えるでしょう。

8. そこで、そのまま全体を左右に返して表向きにします。この瞬間は中央付近にクラブの7が見えています。(写真4)ここで大切な質問をします。「こちらが表側です。これは一組のカードを床にばらまいて上から写した写真ですが、52枚全部のカードが写っているわけではありません。したがって、お客様が選ばれたカードが見えるかどうかは半々です。ちょっと調べてみてください。お選びのカードは見つかりますか?」観客は真ん中付近のクラブの7が認識できれば「見つかった!」と応えるでしょう。

写真4
写真4

9. そこで、再び4枚をそのまま再び裏返しにします。そして、「私にはこうして裏からでもお客様がお選びのカードがわかります。おそらくこれだと思います。」と言いながら、マジシャンズワックスか両面セロテーブで留めてあったカードをペロリと剥がして、澄まして、それを裏向きのまま脇にそっと置きます。

10. そうしたら、今度は4枚の切片をバラバラにして、表を向けます。 そして、それを再び1枚の写真に並べて見せます。 ただし、この場面では並べ方が次のように変わります。「左上隅がHA、右上にSA、左下にC8、右下にC6」このように配置すると中央にカード1枚分の長方形の穴が現れます。(写真5)

写真5
写真5

11. 「カードを1枚取ったので、ここに穴があきましたね。私がお客様のカードを取り除いたので、先ほどのお選びのカードが見えなくなったのではないでしょうか。」と言います。調べても観客にはクラブの7が見当たらないでしょう。先ほどのクラブの7のデザインは実は三ヶ所に散っており、左下のクラブの8らしいカードと右下のクラブの6らしいカードがその部品になっています。そして、クラブの7のインデックスはどこにあるのでしょうか?それは上のハートのエースの裏側に半分隠れて、スペードの7のように装っています。ここが筆者が苦心したデザインのレイアウトの部分です。観客は自分のカードが見当たらなくなったと言いますから、そこで、そのままの位置で写真全体を裏向きにします。もちろん、中央の穴は中央にあります。(写真6)

写真6
写真6

12. そこで、さきほど別にしておいた小さなカードを取りあげて、裏向きのまま、写真の中央の穴の位置に置いてみます。するとサイズがピッタリその穴にはまります。

13. 「先ほどお選びのカードは何だったでしょうか。おっしゃってください。」と言います。観客が「クラブの7」と応えますから、そこで、真ん中のカードをひらりと表向きにするとそれは正しくクラブの7です。

<後記> このデザインは極めて巧妙に構成されているので、商品としても世界の奇術家から歓迎されるだろうと考えていますが、今日までそのチャンスに恵まれていません。いまのところは、筆者の周囲の方々を喜ばれせているだけというわけです。

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